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第907夜:昭和20年代前半の桜井昭二のこけし

Syo2_honnin_s22_kaoほぼ一年ほど前にヤフオクで戦後間もない頃と思われる鳴子系こけしを入手した。目が大きく新型の影響を受けたようなこけしと思われた。昭和20年代前半頃のものと思われたが、当時のこけしは文献でも殆ど触れられることもなかったため、それらのこけしの素性は分からず、そのままになっていた。先ごろ、最近出品が続いている橘コレクションの一環として、目の大きなこけしが出品され、その表情が昨年入手のこけしと良く似ているので、改めて比べてみることにした。口絵写真は、桜井昭二のこけしの表情である。


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写真(2)(3)に2本を並べて見た。左が昨年入手したこけしで、右が橘コレクションの一環として出品されたこけしである。左は大きさ6寸。胴底に「22.3.31 ・・・ 鳴子土産」の墨書きがある。土産物として頂いた方が記入したのであろう。右は大きさ8寸5分。胴底に「櫻井昭二作 昭22.6」の署名がある。共に昭和22年の作であることが分かる。右の昭二作は、木地もしっかりしており、胴上下に1本ずつ鉋溝が入り、肩の山にはウテラカシ(ザラ挽き)が施されている。また肩の上面には赤のロクロ線が1本引かれている。胴模様は各種の菊を一面に散らして華麗である。一方、左のこけしは、端材を使ったようで頭の嵌め込みも緩い。胴は湾曲の少ない直胴で、胴上下および肩の山に赤のロクロ線が引かれ、肩の上面にも赤が塗られている。胴模様はシンプルな菱菊である。

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次に、写真(4)(5)で頭部と面描を眺めてみよう。頭は両方とも縦長で、水引と鬢飾りの様式は違うものの、細く筆数の多い鬢、中央部に力を入れた描いた眉、向かって右瞼が下がった大きな瞳など、同一人の筆致を思わせる。従って、右のこけしが昭二作であれば、左のこけしも昭二作である可能性は強い。使われた木材、作りの丁寧さなどから、左は一般観光客向けのお土産こけしとして多産されたもので署名もしていないが右は収集家向けに力を入れて作ったもので署名もしたのではないかと思われる。

ここで、桜井昭二の初期のこけし作りを振り返ってみよう。「こけし辞典」や「桜井昭二と第8回伝統こけし30人展」の冊子によれば、昭二は昭和2年1月1日の生まれで、桜井万之丞の長男である。昭和16年、鳴子尋常高等小学校を卒業後、中山平の伯父大沼岩蔵に弟子入りし、木地修業を行う。昭和21年(20歳)に鳴子に戻り、新型や旧型のこけしを作ったとある。岩蔵に弟子入りする前の戦前のこけし(昭和14年作)も存在するようだ。

これより、本項の昭和22年作は、鳴子に戻ってから間もない頃に作られたこけしということになる。岩蔵の弟子でありながら、最初は岩蔵型を作ったのではないことが分かる。8寸5分のこけしの胴は木地・描彩とも、明らかに父万之丞のこけしを引き継いだものであることは分かるが、縦長の頭で大きな目は万之丞とはやや異なる。しかし、鳴子に戻った昭二は、描彩を母こうから習ったとあり、「こけしの美」掲載の万之丞(描彩こう)は比較的大きい目をしており、その影響は考えられなくはない。昭二が本格的に岩蔵型に取り組むのは昭和25年頃からとあるが、25年の署名で本項のこけしと同様に大きな目のこけしも存在しているので、その頃まではこのような大きな目のこけしが作られていたのであろう。

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コメント

桜井昭二さんといえば、岩蔵型や栄吉型が定番といった印象がありましたが、若い頃はこういうご両人のそれとは違う目のぱっちりした可愛らしいこけしを作っていたんですよね。自分も数年前に本人型と思われる昭和28年頃の三寸物のをヤフオクで購入しましたが、胴体にポスターカラーで描いた花模様がある作品でした。後年、新型のこけしコンクールに出品されるくらいの方ですから、こういった手法も簡単に取り入れたのでしょうかね。

投稿: 益子 高 | 2014年2月 1日 (土) 22時21分

益子高様
戦後直ぐの昭和20年代辺りは、昭二さんも旧型、新型、多系統のものなど色々なものを作って居たんですね。世の中は復興に忙しく、その分、自由な雰囲気に満ち溢れていたのでしょう。世の中が落ち着いてくるに従って、新型こけしに対抗するため旧型の「伝統」という制約が強くなって、このような目の大きなこけしは伝統の枠から外されるようになった。この時期のこけしはもっと注目されても良いと思いますが…。

投稿: 国恵 | 2014年2月 2日 (日) 12時33分

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