第921夜:「弁慶」とは…?
さて、前置きはこのくらいにして、皆さんは「弁慶」という木地玩具をご存知だろうか。そう言う筆者も、それを知ったのはつい最近で、こけし手帖604号の記事を読んだからである。それから興味を持ってネットオークションを眺めていると、時々それが出品されているのを見つけた。結構高価であり、保存状態との兼ね合いでなかなか入手出来なかったが、ようやく手に入ったので、紹介しようと思う。口絵写真は、その弁慶の表情である。
こけし手帖604号には、高橋五郎氏が『木地玩具の「七福神」と「マトリョーシカ」』と題して一文を寄せている。その中の、『追記・求め続けた「弁慶」』の項で解説されている。それを要約すると、遠刈田の佐藤友晴著『蔵王東麓の木地業とこけし』の中に「弁慶」という木地玩具の名称があり、それは「七福神」の2倍以上の価格であった。しかし、それがどのようなものであるかは確認できなかった。五郎氏が「弁慶」と思われる木地玩具を確認したのは平成18年9月のこと。それは入れ子の玩具で、歌舞伎の弁慶の勧進帳の一場面を表現したものであった。入れ子の木地技術は勿論のこと、その描彩は裏側まで緻密に描かれており、作り手の技術の高さに驚かされたとある。写真も掲載されており、そこには入れ子の内5体が表と裏の両面から示されている。
この手帖掲載の「弁慶」に良く似たものが今回紹介するものである。入れ子は7体となっており、手帖の弁慶も実際は7体あったものと思われる。大きさは一番大きなものが13.5cm、一番小さなものが1.7cmである。こうして7体を並べて見ると、一番大きな左端の1体だけ色が茶色になっているのがはっきり分かる。これが長い年月の間に付いた古色である。作られた当初は、右6体と同様の鮮やかな色彩を纏っていたのであろう。 左の大きい2体は縦長で変化のある形態であるが、右5体はほぼ円形の同じような形態で大きさのみ異なっている。多色を使った鮮やかな色彩と緻密な筆使いを見て頂きたい。 入れ子の状態が分かるように7体を並べて見た。木地技術の確かさを見て頂きたい。1体だけ底に穴が空いているが、他は作った当時の状態を保っており、上下の嵌め込みもしっかりしている。 胴底の状態はこんな感じ。左の大きい2体は底にロクロの四つ爪が残っている。それより小さな5体は、切り離しである。手帖掲載の弁慶は遠刈田で作られたものと思われるが、七福神や弁慶などの入れ子製品も、もともとは木地玩具の先進地である小田原や箱根で作られたものであり、それらが東北地方に持ち込まれて、それを手本にして作られるようになったのであろう。従って、本項の弁慶も、小田原・箱根で作られたものか、遠刈田等の東北で作られたものかは定かではない。
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コメント
静香御前・九郎判官もいますね!
投稿: しょ~じ | 2014年3月27日 (木) 18時12分
しょ~じ様
コメント、ありがとうございます。
一番大きいのが弁慶、一番小さいのが静香御前だと思うのですが、それ以外は誰なのか分かりません。お分かりでしたら、教えて下さい。よろしくお願い致します。
投稿: 国恵 | 2014年3月27日 (木) 23時19分
資料を紛失したので記憶で書きますが・・・歌舞伎の「勧進帳」の従者なのですよね。なので弁慶の巻物が白紙・・・2番目に大きくて整った顔をしてるのが九郎判官(源義経)・他の従者はネットで検索するとでてくるかと。静御前は旅に出てないのでオマケ的な感じでしょうか。
投稿: しょ~じ | 2014年3月28日 (金) 13時09分
しょ~じ様
九郎判官、確かに他に比べると気品のある顔をしていますね。
ありがとうございました。
投稿: 国恵 | 2014年3月28日 (金) 14時31分
7体のもの(勧進帳)だと、
武蔵坊弁慶
亀井六郎
片岡八郎
駿河次郎
常陸坊海尊
源義経
静香御前
とお聞きしました。
9体のものは芋洗い勧進帳となるようです。
投稿: タミヤ | 2014年4月 2日 (水) 00時40分
タミヤ様
ありがとうございます。7体ものと9体ものがあるのですね。
弁慶、義経、静香御前はどれだか判別がつきますが、他の4体は同じような顔なので、どれが誰だか良く分からないですね・・・。
投稿: 国恵 | 2014年4月 3日 (木) 10時15分