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第933夜:戦前健三郎の表情(伊勢・熊野詣で2日目)

Kenzaburo_s14_kao

最新のこけし手帖640号(平成26年5月号)には「大沼健三郎のこけし」と題した一文が載っており、その中で戦前の1本の健三郎こけしを取り上げて、その表情について論じられている。つい数日前に戦前健三郎こけしを入手したこともあり、手持ちの戦前健三郎こけしを、その表情から今一度見直してみようと思う。口絵写真は昭和14年頃と思われる健三郎こけしの表情である。

Kenzaburo_senzen_4hon

写真(2)に戦前の健三郎こけしを4本掲げる。右から7寸(「童宝舎コレクション図集(その四)」掲載品で昭和14年頃とされている)、1尺5分(寺方旧蔵品で15年5月の記載あり、第793夜参照)、次が先日入手の7寸(署名なし)、左端は1尺(乙三洞、16.5.14の記載ラベルあり、第432夜参照)である。一目で右2本と左2本とでは作風に違いがあることが分かる。木地形態で見ても、右2本は頭は岩蔵譲りの蕪形で胴は細み。一方、左2本は丸頭に近くなっており、胴も太目になってきている。胴のロクロ線は、7寸は赤のみ、1尺の大寸では赤と緑になっており、製作時期よりは大きさに依存しているようだ。

Kenzaburo_senzen_kao_4hon

写真(3)には表情を比べるために上記4本の顔のみを並べてみた。先ず、前髪、眉・目、鬢は右2本は顔の上部に寄っているが、左2本では顔の中央部になっている。鬢は右2本は小さく手早くさらっと描いた感じであるが、左2本は大きく1本ずつ丁寧に描いており、特に左端では太く4本になっている。眉・目も左2本の方が丁寧に筆を運んでいるのが分かる。鼻は右2本はU字が深く、目とかなり離れて間延びした印象を受けるが、左2本はU字が浅く目とも近づいて整った表情になってくる。口は右2本が小さい紅1点で右から2本目は墨と紅を重ねているが、左2本は紅2点となっている。製作時期は昭和14年から16年と短い期間であるが、この間に表情は古風な雰囲気から華やかなものに変ってきたのが分かるのである。

Kenzaburo_senzen_atama_4hon_2

写真(4)に頭頂部の様式を並べてみた。こちらも右2本と左2本で大きく変化し、特に赤い水引が大きく華麗になってきているのが分かる。右から2本目は、前髪後部から2本の交叉する黒髪以外に左右に2本の黒髪が伸びているのが他の3本とは異なる。前髪の生え際も右2本は細かく筆を入れているが、左2本では荒くなっている。

以下は、伊勢・熊野詣で2日目の写真・・・

Kumano_torokyo_2

写真(5)は和歌山県十津川村の瀞峡。

Kumano_torokyo3

写真(6)は瀞峡巡りのウォータージェット船からの眺め。ジェット船は天井が開くようになっている。

Kumano_hayatama_taisya

写真(7)は熊野那智大社。

Kumano_natinotaki

写真(8)は那智の滝。

Kumano_kodo_taiboku

写真(9)は熊野古道にある大杉。

Kumano_maguro_kaitai

写真(10)は宿(ホテル浦島)での「まぐろ解体ショー」

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コメント

健三郎が戦前作ったというこけしを2本所有していますが、同じ人の作とは思えない面相をしているなぁと思っていましたがこうして掲示の写真(3)を見るとよくも短期間の間にこの様な変化を遂げたと感心しますね。比して戦後の30年代以降をよく見かけますが、大体硬直な感じ(自分の見た目での感想ですが)の岩蔵型しか無い様に感じますけど、収集家を始めとするお客さんの要望に応える形を取った結果(あくまでも僕の憶測ですが)晩年はこのタイプの作風に定着してしまったのでしょうか?。

投稿: 益子 高 | 2014年5月17日 (土) 22時08分

益子高様
健三郎のこけしは、復活初期を除いて、客の要望(良く売れるこけし)を作っていたのだと思います。戦前の昭和15年以降に華麗なこけしになったのも、戦前の第一次こけしブームで、そのようなこけしに人気があったからなのでしょう。戦後の第二次こけしブームでは、松三郎とともに鳴子の人気を二分していましたし、復元こけしが売れ筋だったので、岩蔵型を中心としたこけしになったのではないでしょうか。

投稿: 国恵 | 2014年5月18日 (日) 19時43分

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