第945夜:梅木修一さんの勝之助写し
写真(2)が勝之助の原(左から2番目)と修一さんの写しである。原こけしは退色が激しく、胴模様は桜崩しの紅い花弁が残る程度だったので、その他の部分は修一さんにお任せした。送られてきたこけしの包みを開いて先ず驚いたのは、胴上部にも紫の太いロクロ線が入っていたこと。勝之助のこけしと言うと、胴上部は赤、下部は紫のロクロ線というイメージが定着しており、高島屋で見た修一さんの勝之助型もその様式だったからである。そこで、原こけしをよく見てみると、なるほど胴上部の太い赤ロクロ線の下にロクロ線の痕跡のようなものがあるようにも見える。また、細い赤ロクロ線の間にもロクロ線が入っているように見え、修一さんはその部分に緑のロクロ線を補ってくれた。結果、ご覧のように華やかな勝之助写しが出来上がったのである。修一さんの話では、ロクロ線があるように見えたので入れて見たが肩の部分が賑やかになり過ぎたようだと。しかし、胴上部を後ろから見ると紫ロクロ線の痕跡ははっきりせず、他の同種の勝之助こけしの写真を文献で見ても見当たらないことから、やはり紫のロクロ線は無いのが正解と思われる。従って、原に忠実ではないが、これはこれで面白いこけしが出来上がったと思う。もう一つの見どころは顔の表情であろう。このような写しを何本かお願いすると、原に近いものと普段作っているものに近いものが出来上がること多い。この4本でも、両端の2本は、特に目が長次郎に近い感じである。胴上下に紫ロクロ線を配したこけしは長次郎の古いこけしにあり、表情とも相まって長次郎的な雰囲気を持ったこけしになっている。
写真(3)は頭頂部の中剃りと胴左側面の模様を示す。原の中剃りは手描きであるが、写しはロクロ線で丸くスペースを開け、そこに緑で丸く入れている、これも修一さんが作る長次郎の様式である。胴側面の模様は「お誂」の崩し文字であるが、原にあったかどうかは判然としない。
写真(4)は修一さんの通常の勝之助型(左)と本項の勝之助写し(右)。すっきりした木地形態とあどけない表情が本項の写しの見所と言えるだろう。85歳になり、胴底に年齢を記載するようになった修一さんの素晴しいこけしがまた1本出来上った。修一さんの増々の活躍を願いたい。
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