第942夜:安太郎の小寸こけし
写真(2)が今回入手したこけしで大きさは3寸。胴裏に「名古屋こけし会記念」の文字があるので、名古屋こけし会が頒布したものであろう。胴底の署名に72歳とあり、昭和42年の作ということが分かる。戦前の小寸こけしを復元したものと思われる。
写真(3)は左が戦前の安太郎こけし(第708夜参照)で大きさは同じ3寸、右が本項のこけし。こうして並べて見ると、同じ3寸でも木地形態にはかなり違いがあるのが分かる。頭と胴はいずれも作り付けであるが、戦前作の方は頭が小さく首も短くスマートである。戦後作も1本だけ見ると均整のとれた纏まったこけしであるが、比べて見ると頭は大きく首も長い。やや甘いかなとも思う。
胴模様は双方とも赤い花を3輪胴一杯に描いているが、これも戦前作は目いっぱい大きく描き、1輪は胴側面にまで及んでいる。添え葉は3つしか描かれていない。戦後作はやや小振りとなって、胴の前面に3輪が全て描かれ、添え葉も5つに増えている。また胴右下の柵も小さくなっている。総じて、戦後作はこじんまりと纏まっている感じである。
写真(4)は頭頂部の赤い手絡模様。戦前作(左)は小寸用に外側の大きく丸い1本が省略されているが、戦後作(右)は大寸と同じに描かれている。前髪も戦前作は特徴的な三角形であるが、戦後作は丸い半円状になっている。
写真(5)(6)は顔の描彩。戦前作の面描は鋭角的なところが特徴なのであるが、戦後作もかなり意識して描いているようだ。ただ、眉・目の描線にはやや丸みが見られ、頭がやや縦長になっていることもあって戦前作ほどには剛直性は見られない。また鬢も、戦前の鬢は頭頂から顎下まで雄大に描かれているが、戦後の鬢は小振りになり、赤3筆の鬢飾りも付いている。この部分は戦後作の特徴が残っている。
小寸こけしは、単に大寸こけしのミニチュアではなく、省略するところや大胆に描いたりとメリハリをつけることが多く、この安太郎こけしでも戦前作にはその特徴が見られる。但し、戦後の復元こけしでは、そこまでの対応がとられていないのが残念である。
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