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第937夜:万之丞のこけし(戦前)

Mannojyo_s15_kao

真夏を思わせる暑い日があっという間に変わり、日本列島は北海道を除き、一気に梅雨に突入した。梅雨とは言え、しとしとした降りではなく、各地で激しい雨に見舞われている。天候自体が変化の激しい時代になったのかも知れない。本ブログも更新が滞っており、訪問して下さる方々には申し訳ない限りである。鳴子好きの国恵にとって、個性豊かな戦前のこけしは魅力溢れるものであるが、保存状態なども考慮すると、なかなかこれといった1本に巡り会うことは少ない。万之丞のこけしもその1つであったが、ようやく満足出来るものを入手することが出来たので紹介したい。口絵写真は、その表情である。

Mannojyo_s15_3men

写真(2)が本項のこけしで、大きさは1尺。前所有者の解説では万之丞の自挽きとのこと。何と言っても、大きな平頭が素晴らしい。大沼岩蔵系列のこけしの頭は蕪形が代表的なのであるが、万之丞(自挽)は丸頭が多いようだ。均整のとれた胴は上部に太い鉋溝が1本、下部には細い鉋溝が1本入っている。肩の山の盛り上がりは大き目であるが、後年のようなウテラカシ(ザラ挽き)やロクロ線も入っていない。大きな頭や無彩の肩の山など、岩蔵の古いこけしと相通じるものがある。胴模様も菊3輪とラフに描いた茎葉のみでゴテゴテしていないのが好ましい。このようなことから、昭和15年頃のものではないだろうか。万之丞は戦前は大物挽きが中心で、こけしの製作はそれほど多くなく、特に自挽のものは少ないと思われる。

Mannojyo_s15_atama

写真(3)は本項のこけしの頭頂部。前髪の後ろから引かれた2筆の黒髪を束ねる元結が前髪の付け根から離れて描かれている様式は他の工人には見られない特徴である。

Mannojyo_s15_hikaku

写真(4)に、同時期の健三郎こけしと並べてみた。兄弟であっても、その作るこけしにはそれぞれの個性が良く現れているのが分かる。こんなところもコレクションの楽しみである。

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