第951夜:英太郎復活後のこけし
写真(2)が本項のこけしである。大きさは1尺。英太郎は昭和32年(17歳)に本格的に直助型のこけし製作を始め、19歳作でこけし界に鮮烈なデビューを飾ったが、36年(21歳)の時に転職して川崎に移ってしまった。
その英太郎が再び、こけし界に復帰するのは昭和44年になってからで、たつみの森亮介氏などの説得による。本項のこけしは復帰後間もない45年頃の作と思われる、胴底の署名を写真(3)に示す。「直助型」と書いた達筆な筆致に復帰後のこけし作りへの意欲を感じる。
写真(4)左は19歳英太郎、右が本項の45年作のこけし。共に1尺の大きさで、同じ桜崩し模様である。角張った頭に肩の張った胴、木地形態は殆ど変らないが、本項のこけしの方が、頭がやや縦に長く、胴も僅かに太い。胴の桜崩しの筆致は45年作の方が筆が太く3輪の花自体も大きくなっている。襟脇の蕾も、19歳作は小さく2つ描かれているが、45年作では大きいものが1つだけとなっている。また、胴の裏模様は19歳作には無いが、45年作には赤いアヤメが描かれている。
写真(5)(6)は頭頂部の手絡模様と顔のアップである。手絡模様は19歳作は真ん中のくねった1本が長いが、45年作は短く簡単である。面描では、鬢の形が異なる。19歳作は下部が外側に跳ねるように描かれるが、45年作では下部が内側に曲がってくる。
良く筆の伸びた大きな眉、元が離れた割れ鼻、2筆の紅い笑い口に大きな違いはない。残るは目の描法である。筆致は19歳作の方がおだやかで筆は太目、45年作は筆が伸びてやや鋭角的となり瞼の線もやや細い。眼点は19歳作の方がやや大きめ。このような筆法が相まって、19歳作は温和でやや幼げだがとろけるような色気をもった笑顔となり、45年作は表情強く、成長した女性の色気を漂わす表情となっている。なお、本項のこけしは友の会で5千円で入手したが、19歳作はその10倍以上の値が付くのではと思われる昨今である。英太郎、恐るべしである。
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コメント
英太郎さんは昭和60年頃までは3cm~11cmの11本セットの山型を作ってくれました。囲炉裏の和室?が懐かしいです。
投稿: 雪割草 | 2014年7月31日 (木) 23時02分
雪割草様
私は訪れたことはないのですが、趣のある和室に頼んだこけしが並べてあったそうですね。そんなところでの語らいは愛好家にとって至上の喜びだったでしょうね!
投稿: 国恵 | 2014年8月 3日 (日) 21時06分