第947夜:佐藤慶治のこけし
写真(2)が本項のこけしの全体像。
写真(3)が頭頂部と胴底である。大きさは7寸、童宝舎の旧蔵品で「コレクション図集(その弐)」の59頁に掲載されており、昭和12年頃とされている。胴底には童宝舎の赤インクの印と山形吉野屋の青インクの印が押してあり、吉野屋で売られたものが童宝舎に入ったものであろうか。胴底は鋸での切り離し。頭の嵌めこみは緩く、南部系のキナキナのようにグラグラ動く。頭頂部のロクロ線は黒のベタ塗りで中剃りは無く、鬢の上から後頭部まで手描きの黒髪が添えられている。小さな半円状の黒い前髪の横には緑の飾りの痕跡がうかがわれる。眉・目・鼻・口は筆致太く、中央に寄っている。鼻は丸鼻、口は墨の二筆の上に紅をさしている。大きめの鬢の後ろには赤で耳状の飾りが添えられている。胴模様は、中央部に赤の太いロクロ線を3本配し、その間に緑と紫の波線を入れている。胴上部に襟は無く、花模様を3輪並べている。胴下部の裾模様も稲妻形になっている。
さて、慶治のこけしに関しては、こけし手帖77号に特集としてその変遷が詳しく載っている。それによると慶治のこけしはA(昭和2年~9年頃)、B(昭和10年頃~12年)、C(昭和15年~19年頃)、D(戦後)に大別されている。本項のこけしが昭和12年頃とすれば、Bの範疇に入るこけしということになる。手帖では、Bの特徴として「10年頃までのこけしと比べ重厚さが出てきたが、それがかえって土臭いおもちゃに戻ったようで面白い。重厚さは胴が太めになったことも原因の一つであろうが、目鼻が中心に寄り表情が強くなったこともみのがせない。慶治の長いこけし製作期間の中で、この時期のこけしのみが表情に鋭さと張りをもっている。」 また、「昭和9年頃までをロマン的な時期とすれば、この時期のテーマは「しぶさ」であるといえよう。年代の新旧は別にして味という点からみると、この時期のものが慶治こけしのピークになるのではあるまいか。」と頗る評価が高い。
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コメント
おはようございます。
gooブログへのコメントの返信が出来ませんでした。(liveメールのアカウントを持っていないので)
要は、本が出版できましたら、公開します。それまではお待ちください。
投稿: 木童舎 | 2014年7月18日 (金) 06時32分