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第956夜:北岡のこけしたち

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戦前の遠刈田木地業は、北岡、小室の両商店が中心となって工人を囲い込み、彼らにより作られた各種の木地製品を集めて販売していた。北岡商店は北岡仙吉により始められ、佐藤寅治・直助・治平・豊治など主として周治郎系列の工人が属していた。中でも、こけし等の小物類は若手であった佐藤正吉や英次が作り、佐藤秀一や広喜も遅れて加わったとのことである。これらのこけしは北岡仙吉名義で販売され、同じような様式のものであったため、真の製作者である正吉、英次等のこけしも混同して広まっていった。今夜のこけしは橘コレクションのものであるが、英次かとされていたものである。口絵写真はその表情である。

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写真(2)(3)に本項のこけしの全体像を示す。大きさは7寸7分。細めの胴に大きな縦長の丸い頭が付いている。写真(3)の胴底のラベルには、「北岡仙吉」とあり、また「英次?」とも書かれている。これより、北岡商店から売られたもので、佐藤英次の作かと考えられていたのであろう。現在では、これは英次ではなく、正吉の古作と思われる。

佐藤正吉の古いこけしは鹿間時夫氏著「こけし襍記」の口絵写真8に大5本と小4本が掲載されており、その解説では小こけしは正吉、大こけしは別人(菊治か)とされている。大は丸鼻で眉と目が離れているが、小は割鼻で眉目は比較的くっ付いていて表情は異なって見える。但し、現在ではいずれも正吉ということになったようだ。なお、この襍記の写真は「Kokeshi Wiki」の佐藤(大原)正吉の項に載っているので、ネットからも見ることができる。正末昭初の作かとされている。

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さて、本項のこけしは概ね襍記の正吉に近いが鼻は丸鼻で、眉目は近づいている。襍記の大と小を合わせようなこけしである。写真(4)の右は昭和5,6年頃、正吉のピーク期の典型的なこけしである。角頭に直胴の精悍な正吉に比べて、本項の正吉は頭、胴とも丸みがあり、大らかで土の匂いを感じさせるこけしである。胴上下の紫のロクロ線は太く、頭の付け根まで達している。この点は、首の部分に空白がある襍記の正吉とは異なり、写真(4)右のこけしに近い。従って、本項のこけしは襍記の正吉からピーク期の正吉への移行期、すなわち昭和初め頃の正吉こけしと考えて良いであろう。

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コメント

やはり周治郎一派、豊治と通じるところがありますね・・・。

投稿: しょ~じ | 2014年8月27日 (水) 19時04分

しょ~じ様
なるほど!
気が付きませんでしたが、言われてみるとそうですね。
目が小さい点が豊治の雰囲気に近いですね。

投稿: 国恵 | 2014年8月27日 (水) 22時07分

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