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第958夜:肘折のこけしたち(重之助)

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国恵は鳴子こけしが好みなので、鳴子系に関しては細かい点まで関心を持っているが、肘折系のこけしについてはあまり触れることが無かった。それでも、こけし界の先輩たちが評価したこけしについては一通り目を通してみたいと思う。中でも、初期重之助こけしは興味深いものがある。重之助は昭和35年からのこけしが知られており、本ブログでも第343夜で触れているが何分保存状態が悪く、状態の良いものを探していた。今夜紹介する重之助は昭和37年のものであるが、保存状態は大変良い。口絵写真はその表情である。

初期重之助のこけしに関しては、「木の花(第5号)」で詳しく述べられている。筆者の中屋惣舜氏は昭和35年の初作から41年頃までのものを初期重之助こけしと定義しており、40年前半辺りがピークとしている。なお、35、36年頃の重之助こけしは、30年頃までの横山政五郎こけしに見られる独特のアルカイックスマイルを引き継いだもので、目尻と目頭がかすかに離れた切れ長の目に特徴があると述べられている。

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写真(2)が本項のこけしで、大きさは7寸5分。「木の花」掲載の④7寸と同型であり、昭和37年作ということになる。周助昭和型を意識したものと思われ、前髪と鬢が繋がった様式となっているために顔の面積は狭くなっている。そのためもあってか、36年までのものと比べると、目の長さはやや短くなっている。目尻・目頭の微妙な離れ具合と左目がやや下がって描かれており、紅をさした下に凸の二筆の口がかすかな笑みを浮かべている。筆が手慣れてきたせいか稚拙さは少なくなっている。肩の山と胴中央には赤と紫の帯を入れ、帯上下に配した2輪ずつの菊花を引き締めている。

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写真(3)は頭頂部の描彩である。周助昭和型の赤と緑のリボンを付けているが、巳之助・昭一とはやや異なり、特に後頭部に垂らした2筆に分けたリボンが愛らしい。初期重之助こけしはあまり目にする機会が無いのが残念である。

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