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第954夜:戦後直ぐの盛こけしの変遷

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「高勘」のこけしは私のコレクションアイテムの中心であり、その変遷については興味を持って調べているが、秋田時代と戦後直ぐのこけしについてははっきりしないことが多い。その当時のこけしについては文献でも殆ど記載がなく、また当時のこけし自体があまり知られていないこともその要因だろう。当時のことを知っている方々も少なくなり、今となっては当時作られたこけしだけが、当時のことを物語る数少ない証拠である。最近、戦後直ぐの盛こけしを入手することが出来、ある程度の変遷が分かってきたので紹介したいと思う。口絵写真は、昭和27年頃の盛こけしの表情である。

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先ずは写真(2)(3)をご覧頂きたい。右端は昭和10年台前半の秋田に行く前の作と思われる。肩が角張っており昭和1桁台の俤を残している。右から2番目は「16.11.13」のシールが貼られており、昭和16年の作である。皆川民子描彩かと言われる秋田時代の作である。3本目は「昭和23年11月24日」の署名がある。このこけしに出会ったことにより、盛が本荘から鳴子に戻って来た当時の作風がはっきりした。右のこけしと比べて頭の形がやや異なるが、秋田時代とほぼ同様の作風のこけしを作っていたことが分かるのである。しかし、当時の鳴子は第952夜で述べたように、クリクリ眼の愛らしいこけしが人気だったのであろう。老舗「高勘」の当主とは言え、その風潮に逆らうことは出来ず、右から4、5本目のような角張った頭にクリクリ眼のこけしを作ったものと思われる。5本目には「昭和24年11月6日」の署名がある。3本目と5本目とは僅か1年の差、この間の変化の大きさには驚かれる。6、7本目は25,6年頃の作か。署名もなく盛本人の作ではないかも知れないが、高勘のこけしに違いはないだろう。左端では、描彩にポスターカラーが使われている。

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次に写真(4)(5)をご覧頂きたい。右端は昭和26年頃か、ポスターカラーにニスが塗られている。眼点は小さめであるが、雰囲気は前項のこけしと変わらない。塗りつぶされたクリクリ目は愛らしいが、そこには生き生きとした表情が感じられないのである。
そのような鳴子こけしの状況に、東京こけし友の会の母体となったカスミ族と呼ばれたこけし界の先達が危機感を持ち、その族長であった土橋慶三氏が西田峯吉氏所蔵の勘治の大寸こけしを携えて鳴子を訪れたのは、昭和27年3月15日のことであった。そのこけしを見て感激した盛と福寿は、夜を徹して勘治の写しを作り、それが勘治型こけしの出発点となり、その後の復元ブームの火付け役ともなったのである。
写真(4)の右2本のこけしは、盛が西田勘治のこけしを見る前と後のこけしと推測できる。同型のこけしで胴模様など全く同じであるが、表情は格段に違っているのが分かると思う。秋田に行く前のこけし(写真(2)右端)に戻ったような見えるであろう。署名を見て頂きたい。「盛」の字体も同じ草書体になっている。
さて、写真(4)の右から3,4本目は、盛弟子の森谷和男(23歳)と盛次男の高橋福寿(22歳)のこけしである。共に27年頃の作で、木地形態、描彩とも瓜二つの様に良く似たこけしである。左から2本目も福寿作、表情は右隣の作と殆ど同じであるが胴の形態が全く違っている。胴のくびれが大きく、丸肩に太い赤ロクロ線を引いた形態は勘治型の形態である。左端は20年代末の盛こけし。やはり勘治の形態を引き継いだもので、これ以降、この型が盛こけしの中心となるのである。

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コメント

クリクリ目が主流になりかけて、ともすれば新型風に堕落しそうになった戦後まもなくのこけし界に、戦前の渋みのある良品を持ち込んで復元という新しい活路を導いたカスミ族の方々の英知にはただただ頭が下がる想いです。前項のコメでも言いましたが、明るく可愛らしいモノ、変わったデザインのこけし等が主流を張っている今のブームにこうした風穴を開ける向きが現れるのか?、注目したいですね。

投稿: 益子 高 | 2014年8月15日 (金) 22時08分

益子高様
戦前の優れたこけしの復元を勧めたカスミ族の方々、そしてそれに呼応した工人達、いずれもその想いの強さに頭が下がります。それには及ばないにしても、今の我々に何が出来るのか、友の会としても真剣に考えなければならないでしょうね…。

投稿: 国恵 | 2014年8月16日 (土) 15時56分

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