第965夜:善松?or幸助?(その後)
前回(第955夜)で紹介した善松(幸助)のこけしと同様の作が、次週の橘コレクションでも出品され、その後に出品されたのが今回紹介するこけしである。
写真(2)左が955夜のこけしで、右が今回のこけし(大きさは5寸1分)である。写真(3)が胴底の貼られた橘コレクションのラベル。共に「1937.5 東北旅行より 後藤善松」と記されている。「こけしざんまい」には、橘文策氏は昭和12年に2週間の予定で東北各地を廻り・・・」と記載されており、この2本のこけしはその旅行の折、後藤善作として入手したものと思われる。このラベルが間違っているとは考え難く、そうであれば製作時期から言って、左のこけしも子野日幸助の可能性はなくなる。
この2本のこけし、縦長の頭に細身の胴、肩の山の形態を除けば、木地形態はほぼ同じ。頭の嵌めこみが緩く、振るとクラクラする。一方、面描を見てみると、目の筆法は似ているが前髪、鬢の描方はかなり異なる。
胴模様は、上に横菊、下に正面菊を描き、花の下には赤い土まで描いている。横菊の描法も竹雄に近く、高勘系ではない。
このように、子野日幸助と言われている写真(2)左のこけしでは高勘系のこけしとしても違和感は無いが、右のこけしは大沼竹雄に近く、これを高勘系のこけしとするのには無理がある。このようなことから、写真(2)の2本のこけしが同一工人の作であるとすれば、それが子野日幸助であるとは考えられない。
写真(5)で、肩の山の様式を比べて見た。右が今回のこけしで、左は天野正右衛門のこけし(第917夜参照)である。扁平な肩の山の形、そこに引かれた2本のやや太い赤線など、良く似た様式であるのが分かる。正右衛門も善松と同じく岡崎斎の弟子、こんなところに共通点が見られるのは面白い。
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