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第985夜:昭二の岩蔵型(S36年)

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戦後の鳴子こけしを支えた名工のひとり桜井昭二さんは、種々の型のこけしを作っているが、本命は伯父であり師匠である大沼岩蔵のこけしなのであろう。国恵は昭二さんのこけしでは庄司永吉型に力を入れてきたが、岩蔵型はそれほど集中的には集めて来なかった。そんな中で、昭和36年作の岩蔵型はやはり後世に残る秀作だと思う。今夜は、そんなこけしを紹介したい。口絵写真は、昭和36年作岩蔵型の表情である。

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先日入手した岩蔵型のこけし、大きさは尺1寸弱であるが、頭が大きく胴も太いこともあって、そのボリューム感たるや半端ではなかった。太目の胴も上部は絞り気味で下部は裾にかけて広がっており、大きな頭と相まって何とも美しい木地形態である。肩下には深い鉋溝が1本掘ってあり、その上面を赤く塗っている。胴裾には太い赤ロクロ線と4本の細い赤ロクロ線のみ。緑のロクロ線は引かれていない。肩の山は木地のままで細工もロクロ線も引かれていない。「ぽっぽ堂こけしギャラリー」に見られる前期の岩蔵を意識したものなのであろう。太い胴に正面菊を二輪、それも割合こじんまりと描いている。花の下には緑の枝と葉が、これも申し訳程度に小さく添えられている。全体的に白生地を生かし、胴模様はそれに溶け込んでいて自己主張をしていない。花の上に紫色の波模様を小さく描いているところにかすかな色気が感じられる。前期の岩蔵を忠実に真似るなら紫色は要らないであろう。なお、全体にロー引きが極薄いのも好感が持てる。

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胴の半分もの大きさがある蕪形の頭も豪快である。岩蔵こけしの約束事に従って面描は頭の上方に小さく描かれ、顎下にはふっくらした空間が残っている。髪に添えられた水引も小さく愛らしい。そして見所は何と言っても眉・目の表情であろう。アクセントを付けるように上瞼の中ほどを太めに描き、そこにちょこんと眼点を入れている。そこから生み出される視線は強く、活き活きとしている。若き日の岩蔵はこんな眼を描いたのであろうか。そんな想いが湧きあがってくるようである。シンプルで豪快、惹き込むような瑞々しい表情。昭二岩蔵型の傑作と言って過言はないであろう…。

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もう1本、36年の岩蔵型と一緒に並べて見た。右は第458夜で紹介したもので、こちらは後期の岩蔵型を模したもの。形態もスマートになり、肩にはウテラカシとロクロ線が入り、胴模様も紫を多用して華やかである。しかし、表情は本作と同様に強く、若々しいものである。昭和36年の岩蔵型は、昭二さんの数多くの岩蔵型の中でも特筆すべきものと思う。「木の花(10号)」では、昭和40~41年作の物を佳作としているが、この36年作はそれに勝るとも劣らない秀作であろう。

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