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第979夜:謙作と淳一

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津軽の「眠りこけし」と言われる川越謙作のこけしを入手した。今まで謙作の優品に出会ったことが無く、また強烈な印象を与えるこけしでも無かったため入手する機会がなかった。とは言え謙作こけしに興味が無かった訳ではなく、笹森淳一や今晃の謙作型は入手していた。今回の謙作こけしは古色が大分着き、緑色も殆ど飛んでおり、保存状態は良くなかったが、手持ちの淳一作と型、大きさが瓜二つだったので比較のために入手したものである。口絵写真は、その謙作こけしの表情である。

川越謙作は明治44年、青森県中津軽郡藤代村(現弘前市)の生まれ。大正15年4月、17歳の時に兄謙次郎の弟子となり木地修業を始め、昭和7年10月に独立して雑貨商を営みながら木地も挽いた。昭和19年応召、20年9月に復員した。戦後もこけしを作ったが、昭和34年7月15日48歳で没した。(以上「こけし辞典」より)

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今回の謙作こけし(右)を笹森淳一の謙作型(左)と並べて見た。大きさは6寸。ご覧のように右の謙作こけしを「原」として写したように良く似ている。本稿の謙作こけしと同型のこけしを元にして作ったものであろう。胴下部の赤い足(?)の大きさにやや違いが見られるが、全体の形、胴上下の赤い2本の鉋溝、胴のトンボのような花模様の位置までほぼ一緒である。これにより、謙作こけしでは消えてしまってる緑の葉模様を窺い知ることが出来るのである。幼子の眠り目も一筆目で上手く表現している。なお、この謙作こけしは「童宝舎」旧蔵品で「童宝舎コレクション図集(7)」に掲載されており、そこでは昭和10年頃と記載されている。

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手持ちの謙作型を並べて見た。左2本は笹森淳一作で右は今晃作。持ち味は違うが腕の良い両工人の作で流石に巧く纏まっている。

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