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第984夜:初期作の味わい(勝英)

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こけし蒐集の楽しみは色々あるが、工人の初作(初期作)に力を入れて集めている人も居る。書籍蒐集でも初版本を集める例はあるが、こけしの場合はその表情の面白さに惹かれることが多い。決して上手いこけしではないが、真剣に取り組んでいる気持ち、その新鮮さが表情にあらわれて、稚拙でも味わい深いものとなっている。そして思わぬ傑作(?)に出会う事もあるのである。この初期の表情は工人によって違いはあるが、そう長くは続かない。やがて上手くなってしまうからである。そうなると、初期作の独特の味わいは薄れてしまう。中古市場を小まめに眺めていて、そういうものに出会えたら、そのチャンスを逃さないように気を付けているのが肝要である。今夜は、先日見つけた阿部勝英の初期作である。口絵写真はその表情である。

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このこけし、大きさは6寸4分。土湯の治助系列のこけしらしいことは分かるが、一見では誰の作か分からない。署名はなく、胴底に「勝英」と鉛筆書きがあるため、勝英作だと考えられる。木地挽き、胴のロクロ線模様は一応の水準に達しているようだが、顔の表情は何ともぎこちない。2重の蛇の目模様にバサっと描いた前髪、カセは横に3重である。眉は太く、左眉は眉尻が上に跳ねている。鯨目風の目は大きめで眼点も大きい。鼻は右に流れ、墨で描いたやや複雑な口には紅を差している。筆は定まっておらず、稚拙な描彩と言えるだろう。「ぽっぽ堂こけしギャラリー」に稲毛豊の初作と称するこけしが載っているが、それと同類のこけしと言えるだろう。

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勝英の初期作と言えば、「こけし辞典」の鹿間治助写しが有名で、本ブログでも第539夜で紹介している。写真左のこけしである。このこけしと本項のこけしを比べると、左のこけしが特定のこけしの写しであるという点を考慮しても、その木地形態、描彩も含めその雰囲気は大きく異なる。勝英は昭和43年の2月から4月にかけて、阿部一郎に木地挽きを、妻のシナに描彩を習っている。そして5月からは左のような治助型のこけしを作っている。左のこけしの後に右のこけしを作ったとは考え難く、右のこけしは、こけしを習っていた2月から4月の時期で、しかもある程度出来上がっているので、鹿間氏が写しを頼む直前辺りのものであろうか。初作集めの蒐集家には堪らないこけしであろう。

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