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第983夜:42年の弘道こけし

Hiromichi_s4203_kao

先日の友の会12月例会には、入札品に斎藤弘道のこけしが3本出ていた。弘道として評価の高い34年とそれより少し後、それに42年作である。弘道好きの国恵の気持ちが動くのは仕方のないこと。結果的に42年の1本を手にすることが出来た。弘道のこけし(特に本型)では胴の色彩の保存状態が良いことが決め手でもある。弘道の42年近辺のこけしについては、第621夜で述べているが、今回の1本はそれらとはやや雰囲気が異なるので、改めて検討したい思う。口絵写真は、その42年弘道の表情である。

42年の弘道については「木の花(30号)」の『弘道のこけし』の中で詳述されている。そこでは、42年4月、6月、9月、10月の作が写真紹介され、その特徴が記されている。ところで、今回入手した弘道こけしには、胴底に「42.3」との鉛筆での書き込みがある。これは入手者が書いたものと思われ、42年3月以前の作と考えられる。

Hiromichi_s4203_hikaku

手持ちの42年作本型こけしと並べてみた。左の2本は第621夜で紹介したものであり、製作時期は明確ではないが、その特徴から42年作と推定したもの。42年の特徴を具備している。42年の特徴は、顔(特に目)の表情と胴のロクロ線模様である。胴模様は、赤の波線と紫のジグザグ線が2段であることが特徴。この3本はその形式に則っている。但し、左2本は肩の3本線が紫であるのに対し、本項のこけしは緑になっている。緑は太治郎の古い時代のこけしに見られるものである。

Hiromichi_s4203_kao_hikaku

では、もう1つの特徴である目の描法を見てみよう。この42年の目は、「木の花」の記述によれば『目は小さく鯨目風のつぶし目で、下瞼が右下へ延びて上瞼の右側の下が左へ入り込む、複雑な描法である。』とある。この写真では、左の2本が正にこの描法である。しかし、本項のこけしでは、上瞼の右端が下瞼の左へ入り込むところが顕著ではない。そのような描法に挑戦し始めた頃なのかも知れない。また前髪の本数が12本と多い。
このこけしでは、もう1点注目すべきことがあった。それは、頭にガラが入っていて、振ると音がすることである。土湯系では時々あることだが、弘道のこけしではあまり聞いたことが無く、この時期のこけしに何故入っていたのかは疑問である。

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