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第6夜:西荻トークショー

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昨20日、東京西荻窪の紅茶とこけしの店「西荻イトチ」にてトークショーがあり、出演したのでその報告である。今月は3日から28日まで、「西荻窪こけしエキスポ」と題して各種のこけしイベントが企画されており、その一環として西荻イトチでは毎土曜日にトークショーが開催されている。その2回目であった。このイベントを当初から企画・実行している佐々木一澄さんからお誘いがあり、出演することになった次第である。テーマが「鳴子こけしの魅力を語る」ということで、鳴子大好きの筆者に話があったのだろう。口絵写真は西荻イトチの外観である。

西荻イトチには今回初めて訪れたのであるが、間口が狭く奥に長いこじんまりとしたお店で、壁の所々に設置された小さな棚に各系統のこけしが少しずつ並べられており、美味しい紅茶を飲みながらこけしを楽しめる、そんな洒落たお店であった。こけしを棚一杯に並べた従来のこけし店とは全く雰囲気の異なる今風のお店である。土曜日の午後ということもあってか、ひっきりなしに若いお客さんが訪れていた。
トークショーは18時から開始され、参加者は15名。友の会の例会でお会いする会員の方も多く、筆者からみると全員が若い方々であった(笑)。

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先ずはトークショーの会場を中と外から見たところ。店の奥のテープルに話者が座り、横の長い棚にこけしを並べ、通路には2列に椅子を並べて、そこに参加者が座って話を聞くというスタイルである。もう間近で向かい合っている状況である。

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こちらは佐々木一澄さん(左)と筆者(右)。前に置かれているこけしは、右から大正期の勘治一家(盛)のこけし、筆者が最初に入手した福寿こけし(昭和47年3月)、20年代前半の鳴子こけし2本(昭二と力)、福寿さんと面識を持つきっかけとなった記念すべき福寿こけし(52年5月)。

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話の中心になる棚に並んだ鳴子こけし。高橋盛の各年代のこけし(筆者蔵)と佐々木さん蔵の最近の鳴子こけし。

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有料のトークショーで何も無いのも気が引けるので、佐々木さんに資料を作ってもらい、それを参加者に配布した。佐々木さんは流石にイラストレータだけあって短期間に素晴らしいものを作ってくれた。
さて、今回のトークショーでは、次の3点をテーマにお話した。
(1)こけしとの出会いから福寿こけしにのめり込むまで
(2)高橋盛こけしの年代変化
(3)鳴子こけしの魅力(一側目の魅力)
先ず(1)では、東北縦断の自転車旅行の際に、鳴子の福寿の店で最初のこけしを買ったこと、当時の福寿こけしの入手の難しさ、全日本こけしコンクールで見た福寿こけしに感激してそのまま鳴子に直行し、そのこけしを奇跡的に入手できた福寿さんとの出会いなど。

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次に(2)では、大正期から戦後までの盛こけしを現品をもとに説明。特に、従来軽視されていた昭和20年代のこけしを再評価するとともに、昭和27年、土橋慶三氏が西田氏所蔵の勘治こけしを鳴子に持参し、当時の鳴子の工人達に伝来のこけしの復活を訴えたことを、その時に盛が復元した勘治こけしを示して、その前後の鳴子こけしの変化を見て貰った。

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最後に(3)では、一筆目、一側目、二側目と3種類ある目の描き方の中で、①鳴子系こけしではその殆どが一側目であること(他の系統では二側目が圧倒的に多い)、②その一側目は3種類の目の描法の中では最もその表現領域が狭いこと、③そのために鳴子系のこけしではどれも同じように見えると同時に、表情はおとなしく控えめで迫力に欠けること(鳴子系で最も目立つこけしが二側目の勘治や大正期の盛などがある「高勘」こけしであるのも頷ける)。しかし、各工人の一側目をじっくり見て見ると、そこには相当の違いがあり、それは鳴子の系列の特徴と言うよりも、各個人の特徴と言えこと(「高勘」の盛と誓、「高亀」の武蔵と乗太郎を比較してもらえれば納得ができるだろう)。そして、実はその一側目こそが鳴子系こけしの最大の特徴であり魅力でもあるので、そこを味わって鳴子系こけしの奥深さを感じて頂きたいと強調した。

今回のトークショーは少人数でもあったため、終了後多くの方々とお話をすることが出来、大変有意義であった。このような場を提供して頂いた、西荻イトチ店長の伊藤ちえさん、そして佐々木さんに改めて御礼申し上げます!

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コメント

国志堂様
 当日、西荻イトチに伺いましたが、予約完売で残念でしたので、会の様子をお伝え下さり、嬉しいです。素晴らしい資料もうらやましいです。また、このような機会がありましたら、参加したいです。

yuu.n様
そうでしたか。それは残念でしたね。
テーマは変わるかも知れませんが、また機会があればご参加ください。

最近のブームの主流は津軽や土湯のたこ坊主等で、鳴子はイマイチ精彩がないみたいに思われましたが。こういう鳴子がテーマの集いに若いファンが集まるという話は。鳴子が好きな自分としては嬉しいことですね。これからも積極的に鳴子の魅力を伝える催しをして貰って、まだこけしと言えば鳴子といった風潮が起こって欲しいと思います。

益子 高様
鳴子こけし、まだまだ捨てたものじゃありません(笑)。若い愛好家の方々の中に鳴子こけしに興味を持って、その良さ・奥深さに気付き始めている方が結構います。鳴子の工人さんにも良いこけしを作って貰って、この流れを推し進めて行きましょう!

先日のトークイベント、お疲れ様でした。鳴子こけしの一側目に奥深さがあるというご指摘は、とても新鮮で自分の中でも鳴子こけしに対する新しい視点が生まれたように感じました。とても収穫の多い会であったと満足しております。また、トークイベント終了後にお話させていただきそちらもありがとうございました。主に遠刈田の話に終始していまいましたが、大変勉強になりました。

本間和様
思いもかけずトークショーでお会いすることができ良かったです。少しでも参考になれば嬉しいです。遠刈田の大沼昇治、我妻信雄は私も好きな工人で、最初から集めていました。割合入手しやすいこけしですが、良いものがありますので、じっくり選んだら良いと思います。なお、垂れ鼻の信雄こけしは、千夜一夜1の第14夜と第89夜をご覧ください。

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