第13夜:昭和40年代の敏こけし
連日の酷暑にヘキヘキしてブログの更新も滞りがちであるが、ヤフオクには昨年こけし界を驚愕させた極美古作が再び多数出品され、古品マニアの間では既に暑い戦いが始まっている。先日の友の会の入札に表情がなかなか良い菅原敏のこけしが出ており、応札したところ僅差で手にすることが出来た。今夜はそのこけしを中心にして敏のこけしを眺めてみたいと思う。口絵写真は、その敏こけしの表情である。
敏の標準的なこけしを3本並べて見た。大きさは8寸。真ん中が本項のこけしで昭和40年代の中頃の作と思われる。右は昭和34年、左は52年作で、右から30年代、40年代、50年代のこけしということになる。30年代のこけしは庄七晩年のこけしを忠実に引き継ぎ、温和で控えめな美人こけしである。40年代になると、形はスマートになって肌は磨かれ、描彩も洗練されて、30年代と比べると鋭角的な硬質な感じをうけるこけしとなる。前髪・鬢も平筆で描かれるようになる。手間の問題もあるのだろうが、この平筆描きは味気なくいただけない。ただ、細筆で勢いよく描かれた眉・目には力があり凛々しい表情になっているのが見所であろうか。50年代になると、眉・目の筆致は太く湾曲も大きくなるが、筆先が丸まって茫洋とした表情になってしまう。こうなると残念ながら美人こけしの代名詞からは遠ざかった印象を受けてしまう。
裏模様と頭頂部の様式を見て見よう。40年代、50年代に大きな変化はなく、ここでも30年代との差を強く感じてしまう。
さて、40年代の敏こけしの表情が精悍で凛々しいものになっているのには、有名な「鹿間庄七」を復元した影響があるのかも知れない。右2本がその写しで、右端は44年5月に敏本人より入手とある。前髪・鬢は平筆ではないようだ。真ん中は平筆描き。いずれも切れ長で細く眼点の小さな眉・目が素晴しい。
秋保の名工庄七を継いだ敏が亡くなってから20年以上も経つが、その美人こけしを継ぐ者は無く、中古品で偲ぶしかないのは寂しいものである。
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