第21夜:極美古作(佐藤広喜)
今回のヤフオクの極美古作では、特定の工人のこけしが纏めて出品されたのも特徴の一つであった。その中でも、遠刈田系の佐藤広喜のこけしは第1回で4本、第3回で2本、第4回で1本の計6本が出品された。初回で3本も出品され、その他に綺羅星のようなこけしが多数出ていたため、あまり注目しないでいたが、最後の出品となるとやはり気になり、直前になって参加した。最終回ということで他の方々も入れてきて、前5本よりも高価になってしまったが、何とか入手することが出来た。今夜はその広喜こけしを紹介したい。口絵写真は、その表情である。
こちらが出品された広喜6本である。上段左から第1回(17.5cm)、同(25cm)、同(18.5cm)。下段左から、第3回(20.5cm)、同(24.5cm)、第4回(18.5cm)。広喜の古いこけしがこれだけ揃うと実に壮観である。
佐藤広喜は明治時代からこけしを作っていたと思われ、その数も少なくないと思われるが、昭和以前の作の紹介は文献等を見ても殆ど見つからない。この写真の左のこけしが本項のこけしで、右のこけしは今年、調布市郷土博物館で開かれた「加藤文成郷土玩具コレクション」に出品されていた広喜のこけし(「こけし手帖652号参照)。並べて見ると非常に良く似ており、ほぼ同時期(大正中期から後期)の作品と思われる。
改めて、本項のこけしを見てみよう。大きさは6寸であるが大きさ以上に存在感のあるこけしである。角張った頭、鬢は正面からは殆ど見えないくらい横に描かれ前髪も上方にあるため、顔の面積が広い。そこに、切れ長で湾曲の大きな眉・目が外寄りに描かれ、猫鼻と二筆の赤い口がバランス良く配置されている。斜めに描かれた大きめの眼点がキリッとした強い表情を醸し出している。6寸のためかロクロ線の引かれていない胴には大きめのぼってりした菊が三段に重ねられており、葉元は丸まっている。この三段の重ね菊は古い遠刈田系こけしの定番である。胴に裏模様は描かれていない。胴の向かって左横には木のえぐれた跡があるが、これも古いこけしらしくて気にならない。
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