第23夜:春二の古作復元
今朝、TVでニュースを見ていたら、ドスンと衝撃があって、それから暫く揺れが続いた。縦揺れが中心だったためか家具などが大きく揺れるという感じではなかったが、かなり大きな地震だという事は感じられた。TVニュースでの震度は「4」という判定であった。あの東日本大震災の教訓から、棚の扉は簡単に開かないように結んでいたため扉が開いて、こけしが落下するということは防げたが、棚の中では何本かは倒れていた。このような場合、問題なのは扉を開けた瞬間にこけしの共倒れが発生して、結局落ちてくるということ。そのため、扉の開閉はゆっくり慎重に1本ずつ取り出すという作業が必要になる。そのため、2,3の扉を開いただけで、残りは閉じたままになっている。さて、今夜は春二のこけし。戦後、最も人気のあった春二のこけしも最近は割合容易に入手できるようになった。そんな中から今夜は、春二が自身の古作を復元したこけしを紹介しよう。口絵写真は、その古作復元作の表情である。
藤春二は戦前から戦後の昭和50年代後半まで、こけしを作り続けた弥治郎系の名工であり、常に新しいこけしに挑戦し続け、戦後も初めの内は復元作は作らなかった。そんな春二であっても世の中の復元ブームには抗しきれなかったのであろう。昭和30年代の半ばになって、幸太型、茂吉型、今三郎型それに自身の古作の復元型を作るようになった。しかし、心にひっかかるものがあったのであろうか、当初は署名をしなかったようである。その後、幸太型と茂吉型は継続して作るようになったが、今三郎型と自身の古作の復元型は作らなくなったようである。
本項のこけしの「原」となったと思われるのは、「こけし 美と系譜」109番に掲載された一連の春二こけしの内、左端のもの(22cm)で大正期の作とされている。写真は「美と系譜」より転載。
こちらが春二の復元作、大きさは7寸8分(23.5cm)。「美と系譜」に比べると、頭がやや縦長で、その分若干大きくなっており、別に「原」があったのかも知れない。ただ、その他の形態、描彩はほぼ同じである。胴中央部よりやや上で括れをつけ、そこに赤い帯を締め、帯下の胴部を大きめにした形態が素晴らしい。大きくパッチリとした目にピンクの頬紅、鬢後ろの赤い飾りも大きく華やかである。赤色は明るい赤を使っているため、明るく健康的で華やかなこけしに仕上がっている。
胴底に春二の署名は無い。
弟子の井上ゆき子さんのこけし(右)と並べてみた。ゆき子作は大きさ7寸、大正型と言われているものである。木地形態では、頭がやや横広、胴の帯の位置も中央に近くなっている。面描にもゆき子さんの個性が出ているが、胴模様などはほぼ同じである。ただ、胴の裏を見ると、春二こけしはトレードマークの蝶が3匹飛んでいるのに対し、ゆき子こけしは胴の括れ上には蜻蛉、括れ下にはリボンとなっている。
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