第22夜:極美古作(菊地孝太郎)
昨日から今日にかけて、北関東から東北にかけては50年に1度と言われる大変な豪雨に見舞われ、茨木県の常総市では鬼怒川が決壊して広い範囲が冠水すると言う大災害に見舞われた。決壊箇所から流れ込む濁流に多くの家が流されている光景はあの東日本大震災を思い起こすほどであった。冠水の被災者は数千人に上り復旧には長い日数と大きな労力・資金がかかるものと思われる。被災された方々には只々お見舞い申し上げたい。さて、連載となった極美古作の最終回は遠刈田系の菊地孝太郎。一連の出品の中で一番多い7本が出品された。今夜は、その中の1本のこけし。口絵写真はその表情である。
こちらが出品された7本の孝太郎のこけしである。表情にやや違いが見られることから、製作時期は少し幅があるのかも知れない。孝太郎の大正期から昭和初期の古いこけしは殆ど知られていない。大半は、湾曲の大きい眉目で、目は一側目や細い二側目である。この一連の孝太郎こけしは、二側目で目が割合大きく、昭和10年代以降のこけしとは明らかに雰囲気が異なる。昭和初期のこけしなのであろうか。
こちらが本項のこけしを3方から見たところ。大きさは6寸である。頭はやや角張っており、肩の窄まりは少なく、胴は直線的である。前髪、鬢はサラサラと描かれ、頭頂部の大きな赤点と緑点から放射状に手絡が描かれている。鬢後ろの飾りは耳状である。眉・目の筆致鋭く、眼点は大きめで視線は上方に向けられている。小さな丸鼻と二筆の紅口は目に近接して描かれ、集中度の強い表情になっている。胴は上下に2本ずつの紫ロクロ線を引き、その間に大きな重ね菊を三段に描いている。この様式は遠刈田系の昭和1桁代のこけしによく見られる標準的な様式である。昨夜の広喜と同様、向かって左側の胴下部には木地の凹みがあり、粗末な材料を使っていたことが窺われる。これも当時のこけし製作の状況を物語っているようであり、こけしはそれが生まれた時代を反映しているという証拠でもあろう。
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