第33夜:「是伸頒布会」第1回裏話
「こけし千夜一夜物語」の完結記念として企画した「柿澤是伸特別頒布会」の第1回、第2回作品を頒布した。今夜はその第1回頒布品の製作過程の話をしたい。6月に頒布会の案内をしてから大分日が経ってしまい申し訳ない次第である。今回の頒布品の「原」こけしは、「日本土俗玩具集」や「これくしょん」45号などで有名になった所謂「勘治一家」の4寸たちこ。有名なこけしだけあって高勘系の工人は殆どの人が作っているが、「原」からはかなり離れているようだ。今回は「原」こけしを渡して忠実に作って貰った。口絵写真はその表情である。
さて、写真の左端は平成13年作の是伸さんの古鳴子たちこ。たちこで肩に鉋溝が1本入り、眉の無い一筆目であることから、「勘治一家」のたちこを想定したものと思われる。但し、頭の形や面描などは完全に自身のこけしになっている。お父さんの是隆さんもこの手のたちこを作っており、それを元にして作ったものであろう。左から2本目が、今回の写しの試作品。大きさ、形態はほぼ「原」に近い形となっている。また、胴の楓模様もほぼ問題ない出来栄えである。
では、頭部および顔の描彩はどうであろうか。頭頂部の黒髪を纏めて1本にして後ろに垂らす様式と平行に並んだ3本の大きな赤い水引は「原」の様式に倣っている。但し、前髪が小さいことと一筆描きの目の湾曲が少ない点が気にかかった。そこを改善して出来上がったのが、左から3本目の頒布品である。前髪が大きくなって、目に湾曲が付いたため、表情が各段に良くなり、右端の「原」と比べても遜色のない出来栄えである。頭が「原」よりやや細くなった気がするがバランスは崩れていない。肩の鉋溝を深めに入れて精悍さが増した。胴の楓模様も完成度が上っている。
今回の頒布品は1品毎に箱に入っており、その箱には全て是伸さん手描きのこけし絵が描かれている。箱だけでも素晴らしいコレクションになると思う。
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