第37夜:薔薇こけし(大沼昇治)
先日、ヤフオクに大沼昇治のこけしが2本セットで出ていた。胴が括れた昇治が得意とするこけしであるが、胴模様は通常の「梅」ではなく「薔薇」であった。表情などから見て、初期のこけしと思われて入札したが、結局、他に誰も入れて来ず、最低価の1000円で落札できてしまった。そのこけしが本日届いたので調べてみた。この昇治の薔薇模様のこけしは通常「薔薇こけし」と呼ばれている。その製作の経緯については、こけし手帖465号に本橋惣一郎氏が述べられているが、今回のこけしはその初作と同手と分かったので報告したい。口絵写真は昇治薔薇こけし初作の表情である。
こけし手帖465号によれば、K氏が昭和18年に遠刈田を訪ねて佐藤円吉から何本かのこけしを入手した折、おまけとして7寸の弥治郎型のこけしを貰った。そのこけしは梅こけしの変形でおかっぱ頭、胴には薔薇と見える花が描いてあり、後に薔薇こけしと呼ぶようになったとのこと。その後、昭和46年のこけしコンクール東京大会に佐藤守正と一緒に大沼昇治が上京した折に、K氏所蔵の薔薇こけしを渡して円吉型の勉強も兼ねて製作を依頼した。その薔薇こけしは昭和46年の暮れに完成し、初作は本橋氏とK氏に贈られたとの事で、その写真が手帖465号に写真掲載されている。
これが本項の薔薇こけしで、手帖465号に掲載されたものとほぼ同じ。胴底には「46.12.20」の印が押してあり、初作と同時期に作られたものと考えて良いだろう。頭はやや縦長ですらっとしている。湾曲の大きい切れ長の瞳が愛らしい。
さて、手帖465号では、この薔薇こけしはこけし界では中々認めて貰えないのではないかと心配していたが、東京こけし友の会で頒布こけしとして採って貰い、西田先生(当時、会長)が頒布こけしの解説を勤めてくれ、一応の認証が得られたとある。そこで、当時の例会頒布こけしを探してみると、手帖138号の7月例会頒布こけし(昭和47年)に薔薇こけしが掲載されている。
さて、写真左が前述の46年12月で、右は「47.9.16」の書き込みがある薔薇こけし。友の会7月例会頒布こけしに近い。形態が更に細身となり、前髪の先が水平に揃い、眉目の湾曲がやや小さくなって大人びた表情になっている。
この薔薇こけしも梅こけしと同様、その後しばしば作られて来た。写真中央は、今回左端とセットで入手したもので署名なし。ややふっくらした形態で昭和48年頃か。右から2本目は昭和61年、右端は平成3年の作。どっしりとした形態で、華やかなこけしになっている。
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