第34夜:「是伸頒布会」第2回裏話
今夜は、「柿澤是伸特別頒布会」第2回頒布品の話である。この第2回頒布品の「原」こけしは「古計志加々美」原色版に掲載されている大正期盛のこけしである。このこけしに関しては是伸さんのお父さんである是隆さんに写しをお願いしており、それは東京こけし友の会や名古屋こけし会から頒布されている。是伸さんに直接お願いしたことはなかったが、是隆さんの作を見て作ったと思われる作はある。今回は、「原」こけしを渡して直接依頼したもの。試作品の気になる点を修正して出来上がったものである。口絵写真はその表情である。
本頒布品完成までの流れを見てみよう。左端は2年程前の作で是隆さんの写しを見て作ったものと思われる。全体の形や描彩は今回の頒布品と同様であるが、細部には当時是伸さんが作っていた大正型(西田コレクションの大正期盛)の癖が残っている。一番の違いは頭部の描彩と面描である。一見しておだやかで優しい表情のこけしである。
左から2本目は今回の試作品。頭頂部の黒髪と水引の描法が改善されているのが分かる。しかし、表情は左のこけしと同様で優しげである。「原」こけしはむしろ鋭く厳しい表情をしており、その一番の違いは二側目の描法である。是伸さんにはその点に特に注意してもらい、目に鋭さを入れて貰った。また眉の湾曲も大きくして貰った。もう一点、是伸さんのこけしでは鬢の下端が揃って三角形状になっているので、下端をバラして貰った。こうして出来上がったのが、左から3番目の頒布品である。右端の「原」こけしと比べてみれば分かるようにかなり接近したこけしに仕上がっているのが分かるだろう。ただ、頭部と胴の括れがややふっくらした感じがするが、違和感はない。
「原」との違いと言えば、胴中央部に描かれた添え葉にあるかも知れない。「原」では左右一対ずつの葉の中央に「茎」が1本あるように見える。しかしこれは茎ではなく葉の一部ともとらえられる。今回は、これを茎として描いて貰ったがやや長過ぎた感は否めない。胴のふっくら感も含めて次回への課題となるだろう。
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