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第43夜:米太郎型(安太郎と清次郎)

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あと3週間で正月というこの時期に台風並みの風雨が襲い、それが通過したら夏のような暑さになった。異常気象が確実の増えているのが不気味である。さて、山形系の祖とも云える小林倉治の弟子である鈴木米太郎のこけしは、昭和14年頃に秀島孜氏が鈴木安太郎の所で発見した10本前後が残っているだけである。その米太郎のこけしは小林清次郎により復元されていたが、米太郎の息子の安太郎も復元していたのは迂闊にも知らなかった。その安太郎の米太郎型が手に入ったので、清次郎の米太郎型と一緒に紹介しよう。口絵写真は、安太郎の米太郎型の表情である。

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写真左は小林清次郎作、右は鈴木安太郎作で、大きさはほぼ8寸。「こけし古作図譜」に2本の米太郎こけしが掲載されているが、その2本をそれぞれ復元したようにも見える。古作図譜の左は頭が小さく胴も細めで上下に数本の鉋溝が入っている。また胴模様は蒸気で蒸けたようにボーっとしている。清次郎の復元作は赤を薄いピンク色にして蒸けたような雰囲気を巧く出している。鉋溝を含めた形態・描彩とも原こけしの雰囲気を良く出している。但し、米太郎のこけしは視線を下に向けたような表情になっているが、清次郎のこけしの表情はほぼ正面を向いている。一方、図譜の右は頭がやや大きく胴もやや太めであり、写真からは鉋溝を明確に確認出来ない。安太郎の復元作は、胴上下に細い赤と緑のロクロ線を入れているが鉋溝は入っていない。鬢は小振りであるが目は顔の下方にあって眉とはかなり離れており、視線も下方を向いている。米太郎の雰囲気は良く出ていると言えるだろう。ただ、胴模様の花は完全に捕えきっていない。

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こちらは、上記の2本のこけしを横から見たところ。文献等によれば、米太郎のこけしには胴右下部に柵状の模様が描かれているとあるが、清次郎の米太郎型(左)には描かれていない。安太郎のこけしには元々柵が描かれてるので、この米太郎型にも描かれている。

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他にも、清次郎と安太郎の米吉型には違いが見られる。こちらは清次郎のこけし(左が米太郎型、右は吉太郎型)であるが、頭頂部の赤い髪飾りは清次郎の吉太郎型とほぼ同様である。また、3筆の鬢飾りも吉太郎型に近い。

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こちらは安太郎のこけし(左は米太郎型、右は本人型)である。こちらも頭頂部の髪飾りは自身の本人型と同じ様式であり、3筆の鬢飾りも本人型に近い。
このように、同じ米太郎型を作っても、細部を見ると、それぞれが通常作っているこけしの特徴が表れているのが分かる。

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