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第60夜:武治再考(2)

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昨夜は、戦前の武治こけし2本を比較して、その違い(変遷)を考察したが、今夜は更に範囲を戦後作まで広げて検討してみたいと思う。口絵写真は昨夜も紹介した昭和17年頃の武治こけしの表情。

Takeji_hikaku1_all

先ずはこちらを見て頂こう。左から5寸(昭和14年頃)、8寸(同16年頃)、4寸(同17年頃)、7寸7分(同20年代前半)、8寸(同26年)、6寸5分(同30年)。

Takeji_hikaku1_yoko_all

Takeji_hikaku1_ura_all

こちらは同じこけしを横と後ろから見たところ。左端は昨夜の昭和15年作と同手であるが、頭が角張った縦長であるところから14年とした(同手の作が「愛玩鼓楽」に載っている)。また、水濡れがあるが後頭部には3つの山型も描かれている。左から2番目は千夜一夜(Ⅰ)第500夜で紹介したもので、そこでは昭和15年としたが、昨夜の左こけしが15年であることから、それよりやや後の16年頃とした。左から3番目は昨夜の右こけしと同様、眉・目・鼻の描線が極細で胴上下の2本の緑ロクロ線も細いことから17年頃とした。胴下部が広がっているのは小寸のためと思われるが珍しい。ここまでの3本が戦前作と思われるものである。右3本は戦後のものと思われるが、その一連の判別ポイントとして「前髪」の描法を比較してみた。戦前作では形や長さに差異はあるものの筆で一筆ずつ写実的に描いていることが分かる。一方の戦後作では、平筆で塗り潰すように描いてあり、その違いは明白である。なお、右から2本目は頭の形や胴の添え葉の描法が他とは異なることから、特別に意識して作ったものかも知れない。また、戦後の武治こけしには、描彩を娘の昭子がしたものが多いと言われている。右端の30年作は眉・目の湾曲が少なく、優しい表情をしていることから昭子作かも知れない。

Takeji_hikaku_all

最後に、昨夜の2本も入れて並べてみた。昭和14年頃から30年までの武治こけしである。こうしてみると、武治こけしは胴模様が全て重ね菊(小寸以外は3段)であることが分かる。文献等でも、胴のロクロ線が紫のものは見かけるが、重ね菊以外の胴模様は見たことが無い。武治は重ね菊以外の模様は描かなかったのかどうかも気になるところではある。

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