第56夜:吉三郎のこけし
気が付けば、今日はもう正月も7日。全体的に温かい日が続き、穏やかな正月であった。ダッシュでスタートした今年の千夜一夜であったが3日で息切れ。今夜からまた気を引き締めて再スタートしようと思う。さて、山形系の小林吉三郎のこけしは今まで1本も手にしたことが無かった。吉太郎のこけしが好きな国恵にとっては、胴が太く優しい表情の吉三郎のこけしには目が向かなかったのである。そんな中、昨年暮れのヤフオクに戦前の吉三郎が出てきた。古風で眼光の鋭い表情に惹かれ、吉三郎を持つならこれかと思い入手した。今夜はその吉三郎のこけしを紹介しよう。口絵写真は、その吉三郎の表情である。
小林吉三郎は明治20年、山形市旅籠町の生れ。小林倉治の七男である。明治33年14歳のときから倉治に就き木地修業を始め、玩具やこけしも沢山作ったと言う。その後、大正元年に新築西通り、大正5年に薬師町の移り、大正7年鍛冶町で独立開業した。さらに昭和5年には円応寺新道に移った。こけしは暫く作っておらず、昭和15年に深沢要氏の勧めで復活した。以来、戦後まで継続してこけしを作っていたが、昭和46年10月5日没した。85歳。
こちらが本項の吉三郎こけし。大きさは6寸6分。昭和16年頃の作であろうか。吉三郎は後年、「明治型」と称して、細胴で胴の上下に鉋溝の入ったこけしを作っているが、これはその明治型なのであろうか。頭は縦長の丸頭、肩には段があり、胴上下に3本ずつの鉋溝が入っている。前髪は小さめであるが鬢は大きめ、目は二側目で下瞼は下に膨らんでいる。眼点は強く、視線は鋭い。鼻は長めの割り鼻、口は赤2点である。胴には5弁の梅の花を縦に並べて描き、一番上の花弁は花冠のような飾りを付けている。
吉三郎の明治型と並べて見た。左は80歳作で胴底に「明治型」と書き込みのあるもの。右の戦前作と同じ大きさなので事前に入手した。細胴、鉋溝入りの同型(明治型)のこけしと思われるが、頭の形はかなり異なる。吉三郎が明治期に作ったというこけしはどうだったのか気にかかる。左は老齢のためか前髪、鬢が小振りになっているが面描はしっかりしており、明治時代の作をほぼ忠実に再現していることが窺われる。
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