第69夜:佐藤吉之助の戦前こけし(楽語舎初訪)
先日のこけし談話会の時に、楽語舎(旧たんたん)に良いこけしがあるとの話を聞いた。楽語舎に代わってから未だ一度も訪問していなかったので、昨日早速出掛けて来た。京王線高幡不動の駅から表参道に面した「蔵」仕様のビルの3階に楽語舎はあった。以前の「たんたん」はコーヒー店がメインの「お店」であったが、楽語舎はマンションの一室という感じで靴を脱いで上がる。10人以内が程よい人数で20人を超えると座る場所が無くなってしまうくらいの広さである。談話会で聞いた話で目星を付けていたこけしから、今夜は佐藤吉之助のこけしを紹介しよう。口絵写真は、その表情である。
佐藤吉之助は明治41年、遠刈田新地の生れ。佐藤吉五郎の4男である。大正8年から吉五郎について木地修業をし、大正10年からは北岡工場の職人として昭和7,8年まで働いた。その後各地を転々とし、昭和18年からは丸木木工所(福島県)の職人となった。昭和21年に遠刈田に帰郷してからは当地で木地業を営んでいた。昭和48年4月27日、66歳で死去した。吉之助の戦前のこけしは、北岡工場の頃のものは確認されておらず、丸木木工所時代(昭和18年)に山下光華氏が頒布したものが知られている。
こちらが、山下頒布時の吉之助のこけしである。大きさは6寸8分。こけし辞典では、山下頒布は6寸、8寸、尺の3種とあるので、本作は頒布品ではないかも知れない。やや縦長の丸頭に細身の胴を付け、均整のとれたスマートな形態である。胴上下に2本ずつの紫のロクロ線を入れるのは戦前の遠刈田こけしの定石である。ぼってり筆を付けたような前髪、鬢は小さく勢いは感じられないが却って素朴な味わいを醸し出している。眉・目の湾曲は大きいが、細い筆致には勢いがあり下瞼は湾曲が少なく辛めの表情には気品がある。4段重ね菊の花弁は向かって左が8筆、右が7筆とシンメトリーではなく、単調さに変化を与えている。胴右上部(向かって)に少し割れが入っているが鑑賞上は問題がなく殆ど気にならない。全体にうっすら古色が付いているが、緑、紫といった退色し易い色も綺麗に残っており、しっとりとした実に良いこけしになっている。
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