第71夜:佐久間由吉のこけし
湊屋のこけしの続きで、今夜は佐久間兄弟の長兄由吉のこけしを取り上げたい。明治5年生れの由吉は12歳の頃から木地修業を始めたのであるが、明治23年の水害によって土湯を離れており、昭和10年代になって復活する以前のこけしは知られていない。復活以降は継続的にこけしを作り続け、戦後も30年代まで作っているので、かなりの数が残っている。「木の花」によれば由吉のこけしは、初期、1期、2期、3期、戦後の5期に分かれるようだ。口絵写真は由吉こけしの表情である。
こちらが本項の由吉こけしである。大きさは4寸1分の太子型、後述のカセの様式から、第1期(昭和13年~14年前半)の作と思われる。胴上部は太い赤と細い黒のロクロ線、胴下部は黒の返しロクロ、その間に黄の太いロクロ線が入っている。胴裾の台状の部分は赤のロクロ線を放射状に散らしている。赤と黒を主体とした如何にも由吉らしい胴模様である。なお、胴上部の赤ロクロ線にはポスターカラーを使っているようだ。ザンバラの前髪、短めの鬢、カセはうろこ状で中に黒い小点が散りばめられている。眉は大きく勢いがあり、目は大きめで明敏な表情である。製作時期による「カセ」の特徴が「木の花」で解説されている。
« 第70夜:佐久間米吉のこけし | トップページ | 第72夜:初期作の味わい(秋山忠市) »
「土湯系」カテゴリの記事
- 第738夜:友の会2月例会(R7)(2025.02.24)
- 第724夜:友の会11月例会(R6)(2024.11.30)
- 第720夜:友の会10月例会(R6)(2024.11.03)
- 第718夜:大寸の治助こけし(2024.10.07)
- 第715夜:太治郎か…?(祝! 大谷50-50達成!)(2024.09.20)
「古品」カテゴリの記事
- 第744夜:後期高齢者突入!(そごう是伸展)(2025.03.27)
- 第743夜:友の会3月例会(R7)(2025.03.24)
- 第742夜:2本の末吉古品(2025.03.09)
- 第740夜:妖しい大亀ついに登場!(2025.02.28)
- 第739夜:吉兵衛のこけし(2025.02.25)
「全て」カテゴリの記事
- 第746夜:日中線跡の枝垂れ桜と春二こけし(2025.04.21)
- 第745夜:友の会4月例会(R7)(2025.04.19)
- 第744夜:後期高齢者突入!(そごう是伸展)(2025.03.27)
- 第743夜:友の会3月例会(R7)(2025.03.24)
- 第742夜:2本の末吉古品(2025.03.09)
由吉こけしで思い出すのは、今から16年前の夏に友人と土湯にドライブに行ってきた事です。「二代目・浅之助」の看板を掲げている店の中を何気なく覗いてみたら、ガラス棚の中に渡辺和夫さんの由吉型が並べてあり、その鮮やかで濃厚な色彩の胴模様に思わず惹かれて購入しました。和夫さんは自分の作品を「良い出来のこけしだろう」と言いながらも友人の持参した短冊にも快く描彩してくれるなど、気さくでなおかつ自負心の強い方のように見えましたが、その自負心に違わず、なかなかの名品を作っていて、結構人気があった工人であったと記憶しております、それだけに早世が惜しまれます。
投稿: 益子 高 | 2016年2月11日 (木) 19時51分
益子 高 様
渡辺和夫さんは上手い工人でしたね。由吉型のこけしは特に良い出来でした。その後、二代目浅之助を名乗ってからは、和夫時代よりは鋭さはなくなりましたが、それでも水準以上のこけしを作っていました。ほんとうに早逝が残念でした。
投稿: 国恵 | 2016年2月12日 (金) 18時51分