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第84夜:秋山一雄のこけし(復元作)

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今夜も、先日の友の会入札に出たこけしを紹介しよう。秋山一雄の重量感に溢れた堂々たるこけしである。秋山一雄は昭和30年代からこけしを作っていたが、昭和39年に父慶一郎が亡くなってからは一段と力を入れて、39年~40年頃には眉目の筆致鋭い傑作を作りだし、収集界の声価を高めた。慶一郎の復活は昭和11年、石井眞之助氏によるもので、その時に7,8本のこけしを入手している。その内の1本(9寸8分)は深澤要氏に譲渡され、深澤コレクションとして日本こけし館に所蔵されている。今回のこけしは、その慶一郎9寸8分の復元作と思われる。口絵写真はその復元作の表情である。

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こちらが、今回のこけしの正面と側面である。深澤コレクションの「原」こけしは、縦長の大頭で、太い胴は裾にかけて更に広がっており、ボリューム感に富んだ傑作である。一雄がこの慶一郎こけしの復元を行った理由は分からないが、39年から40年のピーク期の高まりが一段落した頃に収集家の働き掛けがあったのであろうか。この手の復元作は、「こけし辞典」カラー口絵やKokeshi Wikiの秋山一雄の項にも掲載されており、いずれも昭和44年作となっていることから、44年に初めて作られたのであろう。本項のこけしは胴底に「44.12.14 名古屋こけし会」の書き込みがあり、名古屋こけし会の頒布品と思われる。「こけし辞典」やKokeshi Wikiと比べると、眉目の筆致がやや太くなっており、表情に変化が表れているのが分かる。
慶一郎のこけしには、鳴子型と蔵王型の2種類があるいと言われているが、このこけしは頭は黒頭で赤緑のリボンもあり完全な蔵王型である。胴も太く肩に段があることから基本的には鳴子系であるが、肩の山には涎掛けのような模様が描かれており、これは阿部常吉と同様で蔵王系の影響であろう。


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こちらは、左が本項の44年作で右が39年作。いずれも一雄の代表作に挙げられるこけしである。この後、一雄は昭和47年には白石の全日本こけしコンクールで内閣総理大臣賞を受賞するのである。

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コメント

これは素晴らしいこけしですね。
見事なフォルム、張り詰めた描彩、表情。
当日参加しなかったことが悔やまれます😱

ぽっぽ堂様
お久し振りです。
一雄好きのぽっぽ堂さんと競合しなかったのはラッキーでした!
例会ではなかなか面白いものが出てきます。
ぜひ、お越しください。

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