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第88夜:「かゞ山」印のこけし(渡辺幸九郎)

Kokuro_s14_kao

熊本大地震の本震が被災地に更なる大被害を与えてから1週間が経った。九州新幹線も熊本の一部を除いて開通し、復旧作業も軌道に乗ると思われるが、被災者の方々のご苦労はこれからでもある。挫けずに頑張って頂きたい。
さて、今回も「かゞ山」印が押されたこけしである。弥治郎系の渡辺幸九郎のこけしである。幸九郎のこけしについては、千夜一夜(Ⅰ)の第536夜第661夜で紹介しているが、それらとはやや作風が異なり、時代的にもやや古いものと思われる。このこけし、姿・形といい、描彩といい何とも気品のあるこけしである。通常、こけしは女の子を表したものであるが、このこけしはその中でも「良家の子女」を思わせる雰囲気を持っている。綺麗な着物を着て、うっすらと化粧を施した幼い女児である。お祝いの日なのであろうか・・・。口絵写真はその表情である。

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Kokuro_s14_sokoin

こちらが、その幸九郎こけしの全体像と胴底の「かゞ山」の押印である。大きさは8寸5分。頭はほぼ円形で、胴は襟巻の下が太く裾に行くに従って微かに広がっている。どっしりとして安定感のある形であり、頭と胴のバランスが素晴らしい。幸九郎の胴模様はロクロ線だけのものが多いが、本項のこけしは手描きとロクロ線の折衷様式であり、胴中央よりやや下に赤と紫の太いロクロ線を配し、その上部の胸の部分には菊花を、下部の裾部には赤と緑で裾模様を描いている。どう見ても普段着ではなく、お出かけ用の晴れ着を思わせる。頭部のベレー帽模様は、中心から紫、赤、緑、そして外縁部は紫のグラデーションである。そのベレーの外側には髪を描き、正面の額には赤い半円を二つ描いて、その上から黒い前髪を二筆で描き添えている。また鬢上部には赤い半円の飾りを描いている。鬢は平筆風で短く力強く下し、鬢飾りは赤3筆と緑4筆で簡単に添えられている。眉と上瞼は短いが力があり丸い眼点が何とも愛らしい。円らな瞳は幼子の純真無垢な童顔そのものである。鼻は古い様式の撥鼻、口は黒と紅で小さく描かれている。ほんのり残っている頬紅が愛らしさをより増している。昭和14年頃の作であろうか。幸九郎のこけし歴の中でも、最も完成度の高い時期のこけしなのではなかろうか。

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先に紹介した2本の幸九郎こけしと並べて見た。左から本項のこけし、昭和17年頃、同19年頃。こうして並べて見ると、木地形態、描彩ともに時代による推移が分かる。一言で言ってしまえば、簡略化されてきたということであろう。第一次こけしブームの中で注文が多くなり、それをこなすために手数がかからない方法が考えられたのであろう。本項のこけしの一本筋の通ったしっかりとした形態と手の込んだ描彩に比べて、17年、19年と年が下がるに従って「軽い」こけしになってきている気がする。しかし、それが却って玩具らしさにもなっているのは、師匠の栄五郎の作風の変化と合致しており興味深いことである。

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