第94夜:西山徳二のこけし(若冲展)
昨日は東京都美術館で開催されている「若冲展」に行って来た。9時半の開場前に行くつもりが、交通トラブルで9時半を廻って到着。会場前は既に長蛇の列。当日券の購入に30分を要し、それから並んで3時間待ち。開場前に既に4000人が並んでいたと言う。多くの人がGWの混雑を避けたことが裏目に出たようだ。会期末まで2週間を切って、更に混雑は続くだろうとのこと。最近人気の若冲の作品は確かに一見の価値ありだが、団塊世代を含む高齢者がシニア割引を使って大量に押し寄せているようだ。筆者もその一人ではあるが(苦笑)・・・。文末に写真を掲載。
さて、土湯系の西山徳二のこけしは隠れた人気のこけしであると思う。阿部新次郎の弟子であり、土湯の名家阿部一族の流れをくむものであるが、新次郎のこけしが兄の治助ほどには評価されていないためか、文献などでも取り上げられることも少ない。徳二は昭和16年に戦死したため、その製作期間は長くみても昭和5年から14,5年までの10年間ほどで、残るこけしは昭和7年くらいからであろう。この10年にも満たない間で徳二のこけしは大きく変化し、2期に分けることが出来るだろう。今夜は、その2期の徳二こけしを比較・検討してみたいと思う。口絵写真は前期徳二こけしの表情である。
こちらが徳二のこけし(前面と側面)である。大きさは右が7寸、左が8寸。右のこけしが昭和7年頃、徳二のこけしの中では初期の部類に入る。面長の頭に細身の三角胴。スラッとした長身のこけしである。左は昭和13年頃、頭が平頭きみになり胴も太めになっている。徳二こけしの形態がこのように変化するのは昭和12,3年頃から。変化した理由は分からない。胴模様は初期には赤・緑・紫の単純なロクロ線のみが多かったがが、その後、折線や波線も加わり、更にワンポイントの花模様も描かれるようになる。初期は胴下部のロクロ線は中太の赤ロクロ線が3本であるが、やがて黒や紫の太いロクロ線が引かれる様になる。
こちらは、頭部とカセの比較。右の初期作では面長の顔に合わせるように前髪も長く、鬢も顎の下まで長く描かれている。目は下瞼が水平で上瞼が山形の三角形状で眼点小さく甘みの無いキリッとした表情である。鼻は垂鼻のように長い丸鼻、口は墨二筆で間に紅を差しているようだ。左の後期の作では頭が横長になるのに合わせて前髪も横長になり、鬢や鼻もやや短くなる。目は下瞼は水平であるが、上瞼はなだらかな半円状になり、やさしい表情になる。カセは右は1重、左は3重、2重のものもあるので、年と共に増えて行ったようだ。頭頂部の蛇の目も、この2本では2重であるが、昭和14年になると3重のものも出て来る。初期の面長の凛々しい表情から、横に広い童顔に変って行ったことが分かる。
さて、以下は「若冲展」の写真である。
こちらが会場前の行列。夏を思わせる日差しに日傘の列が並ぶ(左)。遂に待ち時間200分を超える(右)。2桁までしか用意されていない待ち時間表示を急遽3桁に…。
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