第102夜:戦後の大沼誓・力のこけし
今月に入ってからパソコンの具合が悪く、何とか騙し騙し使っていたが先々週末には応答が極端に遅くなり、復元など種々の対応を試みるが効果は一時的なものであり、とうとうパソコンを買い替えることになってしまった。これまでのパソコンはWINDOWS7であったので、これをWINDOWS10に替え、作業環境を以前と同じ状態にするのに暫く時間がかかってしまった。その間、本ブログや友の会HPも殆ど更新することが出来なかった。さて、今夜は大沼誓と力のこけし(戦後)である。口絵写真は力の戦後の誓型の表情である。
大沼力は昭和20年8月より父誓について木地修行をし、同時にこけしも作った。従って、力のこけしは全て戦後作である。「こけし辞典」によれば、力のこけしは『従来は鳴子一般型の菱菊を多く作り、特色は乏しかったが、昭和41年西田峯吉氏蔵大沼誓8寸を復元、・・・』とあり、昭和41年以前には誓型は作っていないと思っていた。ところが、先月、ヤフオクで見慣れない力のこけしを入手し、これによって、力もある時期、戦後の誓型を作っていたことが判明したのである。
こちらがそのこけしである。大きさは7寸。角ばった頭に直線的な胴。目の位置が下方にあり、戦後の昭和20年代、鳴子で流行った愛らしいこけしの面影を醸し出している。
こちらに同型の誓こけし(左:8寸、64歳、昭和29年)と並べて見た。木地形態、下目の表情、胴模様など同型と言って良いであろう。従って、右の力作も同時期と言えるだろう。3つの丸菊(正面菊)を並べた特徴的な胴模様も殆ど同じであるが、力作は向かって右上の菊花を横菊に変えている。
こちらに戦後の誓・力こけしを年代順に並べて見た。右から2番目は昭和20年代前半の力、3本目は本稿の力、4本目は64歳の誓、5本目は67歳の誓、左端は70歳の誓である。右端は昭和19年の誓こけし。誓の戦後20年代のこけしは未だ見たことがないが、「こけし辞典」では『戦後は新型の影響でいたずらに眼点が大きく、甘い作風に変わった・・・』とあり、右から2本目の力こけしと同様のこけしを作っていたと推測される。また、64歳の誓こけしの胴模様が、右端の戦前こけしを元にしたものであろうことも想像される。その後、67歳、70歳と一番下の正面菊が横に長い丸形から縦に長い菱形に変わっていったのであろう。左端の最晩年作では胴に湾曲が付き、表情も右端の戦前作に近いおぼこい表情に戻ってきていることが分かるのである。
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