第129夜:芳藏賛歌!
先週末の締め切りで保存状態が良好な古品が20本程、ヤフオクに出ていた。ここ暫く古品の出品が途絶えていたので注目して見ていた。中に何本か欲しいこけしがあり、入札に参加して2本を入手することが出来た。昨年は極上の古品が大量に出品され、その価格も鰻上りであったが、昨今は大分落ち着いてきて、相応の価格で手にできるようになったのは喜ばしい。さて、今夜は入手した内の1本、岩本芳蔵のこけしを紹介しよう。出品コメントでは大きさが7センチとなっており、豆こけしに近い小品と思っていたが、届いたこけしは17センチの立派なものであり、嬉しい間違いであった。口絵写真はその芳藏の表情である。
こちらがその芳藏こけしである。このこけしでは何といってもその表情に惹かれてぜひ欲しいと思った。第101夜で戦前の芳藏を紹介した際、「特に戦前の凛々しい表情の本人型に惹かれる」と書いたが、本作は小品ということもあって、その漫画チックとも思われる大胆な表情が気に入った。大きさは5寸7分、平頭の頭部は小さく胴長の形態が面白い。頭と胴は作り付けになっている。
第101夜の芳藏と並べてみた。肩のこけた形態は同様で胴上下の赤と緑のロクロ線も同じである。但し、右の大寸は頭と胴は差し込みになっている。胴に描かれた大きな牡丹の花模様も同じと言える。ただ、顔の表情だけが大きく異なっているのである。
改めて、101夜の芳藏(右)と表情を比べてみよう。本項の小品(左)では、顔の中央より下に、大きく見開いた目が描かれ、その周りはうっすらと赤で塗られて善吉様式となっている。鼻は縦線が2本のみで、口は上下に墨で輪郭を描き、その中を赤く塗りつぶしている。迫力のある印象的な表情で、善吉を連想させる。頭頂部のロクロ線は赤と黒の2色で同じであるが、本品の前髪は1本1本丁寧に線を引いたものであり。また横鬢も頭部のロクロ線とははっきり離れている。右の整った表情の本人型とは受ける印象が異なる。芳藏は善吉から、自分(善吉)と同じものは作るなと言われて、自分の本人型を作ったと言う。そう言っても善吉こけしのイメージは残っており、それが思わず顔を出したのが左のこけしと言えるのではないか…。芳藏は戦後の昭和31年以降、善吉型を復元して善吉に肉薄するこけしを作ったが、そこにはどうしても意図的に作ったという雰囲気が拭えない。芳藏こけしの本質は本人型に、それも戦前のものに現れていると思う。
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