第132夜:周助地蔵型の比較
10月の友の会例会には、最近精力的に周助型の復元に取り組んでいる吉野誠二さんの周助地蔵型が出ていた。戦前の秀作こけしは、その系列の工人により復元作が作られ、それらを比較してみるのもコレクションの楽しみの一つである。その矢先にヤフオクで、佐藤きくさんの同型のこけしが出品され、手に入れることが出来た。これで、昭一、きく、誠二と3本の地蔵型が揃ったので、今夜は、これらを比べてみたいと思う。口絵写真は、吉野さんの地蔵型の表情である。
こちらが地蔵型のこけしである。左から吉野誠二作4寸、佐藤昭一作4寸5分、佐藤きく作4寸5分。これらの地蔵型の「原」は「美しきこけし」(名和コレクション)の457番に掲載されている昭和5年頃の周助こけし3寸。これを昭和42年に「たつみ」の依頼で、巳之助と昭一が4寸5分で復元している。他に5寸もある。昭一に復元作については、千夜一夜(Ⅰ)第597夜を参照されたい。きくさんは同じ4寸5分で作っているが、誠二さんは4寸になっている。周助作の形態は遠刈田のこげすとほぼ同じで、中央の2本の鉋溝の上部の括れはそれ程大きくはない。今回の3本を比べると、きく、誠二と括れは大きくなり、また頭の形は角ばってきている。誠二作は表情も目尻が上がったきついものになっており、かなりデホルメされたこけしと言えるだろう。
こちらは、頭頂部を比べたところ。昭一と誠二はほぼ同じで前髪の後に突起のように髪が伸びて、その周りに緑線が3本描かれているが、きく作では突起が無く、その部分に緑点が打たれて、そこから2本の緑線が前に垂れていて、遠刈田系に近い描彩となっている。また、鬢飾りも昭一、誠二は4本であるが、きくは3本になっている。表情もきくは目尻の上りが少なく優しくなっており、紅口の上下に墨2筆で輪郭を描いている。
同じ型のこけしを作っても、そこには作る人の想い(解釈)が現れるものであり、そこがまた収集の楽しみでもあると思う。
同じ型のこけしを作っても、そこには作る人の想い(解釈)が現れるものであり、そこがまた収集の楽しみでもあると思う。
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