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第133夜:吉雄(?)の青坊主

Yoshio_aoatama_kao

秋保のこけしと言えば、菅原庄七が完成させたやや太めの胴に大きな頭を載せ、胴上下には緑の太いロクロ線、切れ長の二重瞼で頭には満艦飾と称せられた赤い手絡模様のこけしが頭に浮かぶが、それ以外に戦前に「新型」と呼ばれた頭頂部を青く塗った青坊主こけしがある。この青坊主が庄七の創作かどうかははっきりしないが、佐藤吉雄も同様のこけしを作っている。吉雄は佐藤三蔵の養子になったが、元は庄七の実弟であり、こけしも庄七に倣ったから、この様式も取り入れたのであろう。今夜は、そんな吉雄の青坊主を取り上げてみたい。口絵写真は、その吉雄の表情である。

Yoshio_aoatama_hikaku

こちらの2本のこけしがヤフオクに佐藤吉雄として出品されたもの。左は大きさ8寸7分、胴底に寺方氏のラベルが貼ってあり、「秋保 佐藤吉雄 15.11」の記載がある。右は大きさ7寸、胴底に「吉雄」との鉛筆書きがある。

Yoshio_aoatama_2men

Yoshio_aoatama_atama_soko

右のこけしを改めて見てみよう。頭頂部が青く塗られた青坊主こけしである。胴に比べて頭が小さく、通常の秋保こけしとは形態が異なる。眉の描線が細く、前髪が向かって右に寄り過ぎていたり、何となくぎこちない面描である。胴模様は、庄七は梅、桃、琵琶の3種を別々に描いているが、本こけしでは、桃と梅の2種を重ねて描いている。また、胴底に鉋の丸溝があるのも珍しい。
庄七の青坊主こけしは、面描、胴模様とも本型こけしとは区別して作られているが(第538夜参照)、吉雄は自身の本型こけしに青坊主の胴模様(特に梅)を取り入れたものを相当作っている。「古計志加々美」128番に昭和14年作が載っているが、それには既に胴中央に梅模様が取り入れられている。

Yoshio_aoatama_ume_2hon

この梅模様について1点気付いた点を記しておこう。一番上の写真の2本のこけしの梅模様を見て頂きたい。様式が異なるのが分かって頂けるであろうか。大きな違いは2点。1つは花芯のシベの頭が、右は横に一列に並んでいるが、左では2~3列になっていること。もう1つは梅の周りの添え葉が、右は墨で葉の筋が描かれているが、左は緑1色で葉の筋は描かれていないこと。この右の様式は庄七の梅模様に見られる特徴で、そこから右のこけしは庄七の梅模様を取り入れた初期の作と推測される。

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こちらは、戦前戦後の吉雄の梅模様こけし。「加々美」の吉雄も含めて、本稿の1本(右端)を除いて、庄七様式の梅模様は見たことがない。吉雄様式の梅模様はかなり早くから確立されたものと思われる。

Yoshio_aoatama_kao_hikaku

しょ~じ氏の投稿から、同型のこけしが掲載されているブログが見つかったので、それを紹介する。山尾武治の6寸8分ということで、大きさ、形態、胴模様はほぼ同じである。ただ、武治の面描は筆太く、大きな眼点で近代的に見える。戦後の作か…。ところで、武治の戦前作には細筆の面描のものもある。上写真の左は細筆の武治、右は本稿のこけし。眉目の筆致や向かって右の鬢下が外に流れる描法に共通性を感じなくもない。本稿の青坊主は戦前の武治かも知れない…?

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コメント

山尾作のような気もします。

しょ~じ様
山尾とは思い付きませんでした。
どこかに山尾の作例は載っていますか?

清さんのブログ(かなり初期)に似たのがありました。ただ少し顔が違うので、今回のは昭さんの作かなと勝手に妄想してます。

しょ〜じ様
清さんのブログ確認しました。
確かに同型のこけしですねぇ。
面描の筆致は違いますが、武治にも細い筆致の面描はあるので、どうでしょうか。
昭だと初期になるのでしょうが、年代的にどうなんでしょう…。

どうでしょう?武治ですか!?

しょ~じ様
清さんのブログの武治は戦後作、本稿の作は武治の戦前作の可能性はどうでしょう…。

清さんのも戦前だと思います。ひょっとしたら秋保の木地問屋:上野屋から捌かれたのか等、考えさせられますね。

しょ〜じ様
戦前ものですか。
一側目の眼点が大きいせいか、雰囲気が大分違いますね!
この手のものはあまり作例を見かけないので、
現物を見ると認識を新たにすることが多いです。

秋保の一側目(変わり模様)を見ると、後藤熊太郎・高岡鉄寿・海谷吉右衛門ら仙台の作者と少なからず影響し合ったと考えられます。行沢の佐藤文六も皮付きおかっぱの変なのを作ってます。

しょ~じ様
なるほど!
今まであまり注目されなかったこけし達ですね。
その辺りを追及するのも面白いかも知れませんね。

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