第141夜:帰ってきた大沼誓のこけし!
思い入れのある大沼誓のこけしが我が国恵志堂に戻ってきた。この誓こけしは、こけし手帖506号でO氏が紹介していたもの。その後一時、国恵志堂の手許にあったが、その後ぽっぽ堂さんの所に移り、ぽっぽ堂こけしギャラリーやぽっぽ堂コレクション図譜を賑わしていた。「誓ラブ」の国恵志堂は手許に無くなったことをずーっと後悔していたが、その誓が先ごろ、ぽっぽ堂さんからヤフオクに出品され、とうとう手許に戻すことが出来た。嬉しい限りである。今夜は、その誓こけしを改めて紹介しよう。口絵写真は、その誓こけしの表情である。
鳴子大好きの国恵志堂の中にあって、誓こけしは上位に位置するこけしである。同じように見える鳴子こけしの中で、誓こけしは姿、表情とも一種特徴的なこけしであり、その魅力に引き付けられてしまう。
さて、こちらが本項の誓こけしの全体像である。大きさは8寸4分。胴底には鉛筆で「1940.12.7 大沼誓」の書き込みがある。「こけし辞典」では誓について『昭和15年より自宅にロクロを据え、自挽きのこけしを発表した。自挽き初作に近い作は、荒削りの素地に染料が濃く滲み、古拙な風味を遺憾なく発揮している。自挽きの木地は肩が高く、赤ロクロ線が太く3本入るのが特徴。』とあり、O氏はこれを引用し、『鹿間氏旧蔵の誓で、8寸5分。底に昭和15年12月7日の書き込みがある。肩が高く、赤ロクロ3本、染料の滲みと右に引用した条件を備えている。私が張り込んで落札した理由で、入手は15年ほど前になる』と解説している。鹿間旧蔵品の入札会でかなりの額で落札したことが窺える。
ほぼ同時期の誓こけし(左6寸6分:S16年)と並べてみた。左の誓も戦前作としては保存は良い方で胴の黄色も良く残っている。しかし、右の誓と比べれば、その色鮮やかさの差は歴然で、右の誓の状態の良さが分かって頂けると思う。胴下部にある水濡れ跡など全く気にならない程である。大きな前髪に眼点の大きな三角形の目、眉・目・鼻・口は顔の中央に寄り、やや下膨れ気味のおぼこい表情である。右の誓では、肩の上面が中に行くほど上がっていくが、左誓ではほぼ水平で角が鋭角的になっている。特徴的な肩の山の赤ロクロ線も、右誓では一番下のロクロ線が肩上面に接しているが、左誓では下部に隙間がある。右誓と左誓では製作日は数か月の違いと思われるが、右誓には古風さが残り、左誓ではよりシャープになっているのが見て取れる。
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