第144夜:伊藤保夫のこけし
伊藤保夫と言っても知らない人が多いだろう。筆者は「高勘」のこけしが好きなので、その縁で知ってはいたが、そのこけしを目で見るのは初めてであった。そういう意味では珍しいこけしなのである。先日、ヤフオクに滝島茂と2本セットで出品されたもので、他に誰にも注目されず、出品価の500円で落札出来てしまった。それだけ評価されていないということでもあり、「高勘」マニアとしては寂しい気もするが、安価自体はありがたいことではあった。今夜はそのこけしを紹介しよう。口絵写真はその表情である。
伊藤保夫については「こけし辞典」に写真付きで紹介されている。それを引用する。
『鳴子出身の木地屋。昭和35年ころ鳴子高橋盛雄の弟子となり、木地を習得。高勘の職人としてしばらく勤めたが、間もなく他出し、現在は神奈川県小田原市にいる。こけしも発表し、少数収集家の手に渡ったが、他出後は全く作っていない。詳細の経歴は不明である。』
なお、「辞典」に掲載の写真は昭和38年の作。
こちらが、本項のこけしの全体像。大きさは7寸。典型的な「高勘」のこけしである。高井氏の「東北のこけし」に、これと殆ど同じものが載っており、そこでは昭和40年頃となっている。肩が丸く、肩の山が低い、戦後の盛が完成させ、盛雄に引き継がれた木地形態に、こちらも「高勘」伝来の正面菊を2つ大きく描いている。眉・目は細く、眼点も小さいために遠くから見ると、一筆目のようにも見える。「高勘」のこけしとして完成している。
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