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第143夜:今朝吉の眼力

Kesakiti_s16_hyojyo

昨夜は、眼点が下瞼からはみ出した渡辺求のこけしを紹介したが、今夜はやはり眼点が下瞼からはみ出した大内今朝吉のこけしを紹介しよう。今朝吉は大正期からこけしを作っていたが、昭和12年頃に製作を止めて息子の一次に木地業を任せたとされる。戦後は昭和29年頃より35年頃まで、一次の木地に面描のみ行った。従って、今朝吉のこけしは昭和1桁台が中心で、残るものは多くないらしい。口絵写真は、今朝吉こけしの表情である。

Kesakiti_s16_2men

こちらが、本項の今朝吉こけしの全体像である。大きさは7寸7分。頭は頭頂部が平らな細身の蕪形で、胴とは嵌めこみである。頭にはガラが入っており、振ると音がする。胴は首から裾にかけてなだらかに膨らんでいる。胴模様は赤と黄緑を交互に引いたロクロ線である。頭の形は今朝吉としては珍しく、一次の木地と思われる。
このこけしには、胴底に「嶽 大内今朝吉 昭和十六年二月十二日」の書き込みがある。今朝吉のこけしとしては昭和12年や13年作のものも知られているが、流石に16年というのは製作日としては考え難いのではないか。名和コレクションにある昭和12年12月作と言われる8寸は、本項のこけしと頭の形が近いが、表情は本項のこけしの方が強い。


Kesakiti_s16_kao

さて、表情を改めて見てみよう。頭が細身であるため、面描も中央寄りになっている。頭頂部の黒の蛇の目はやや大きめで、そこから縦長の前髪が垂れている。カセは無い。鬢は太く長め。眉は長いが太くはない。二重の瞼は目尻が上がり、その真ん中寄りに下瞼からはみ出るように眼点を入れている。正面を睨むようなキツイ表情である。

Kesakiti_s16_hikaku

昭和6年頃の作(左)と並べてみた。頭の形と表情にはかなりの違いが見られる。

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