第146夜:左内のこけし(戦前)2
友の会の例会も終わり、今年のこけし関係の行事もほぼ終了となった。第3次こけしブームとかで、ここ2,3年友の会も若手愛好家の増加、例会参加者の増加が見られたが、最近はそれも一段落したようでブームも最盛期を過ぎたように感じられる。最も、各地のこけしイベントはまだまだ盛況のようで、先のみちのくこけしまつり(12/3開会)では、前月の28日から並んだ方を先頭に50名を超える方々が開会前に並んでいたとのこと。初日の午前中はどこも大変な賑わいのようだ。さて、今夜はぽっぽ堂さんから移ってきた新山左内のこけしを取り上げよう。口絵写真は、その表情である。
左内のこけしは弥治郎系の中でも最も素朴なこけしの一つだろう。表面がピカピカに光った戦後のこけしは味気ないが、戦前のこけしには見どころも多く、人気も高い。左内は昭和2年に結婚して玉山温泉で独立・開業。その後昭和11年に助川に移り、昭和19年に矢祭に疎開した。この昭和2年から11年までを玉山時代、11年から19年までを助川時代と言っており、戦前こけしの中心で評価も高いようだ。
さて、こちらが本項のこけしである。大きさは8寸、鈴木鼓堂氏の旧蔵品で「愛玩鼓楽」の228番の現品であり、昭和8年頃とされている。やや角ばった頭で、胴は太め、頭は嵌め込みで回すことができる。胴が太いといっても、「愛玩鼓楽」の227番には頭と胴の太さがほぼ同じという極太のこけしが載っており、本項のこけしはバランスが良い方と言えるのかも知れない。頭頂部のロクロ線は、中心部の赤丸の周りに細い緑線、その周りを紫の太い帯で巻いている。前髪の左右には赤3筆の飾りを描き、2筆目の下に緑点を入れている。側頭部から後頭部にかけては頭髪を1筆1筆細かく描いている。鬢の後には緑の耳が描かれ、その上に赤3筆で鬢飾りを付けている。面描は、上瞼は鋭角的でそこに大きめの眼点を入れている。鼻は撥鼻、2筆の墨口に紅を添えている。幼げでおっとりとした表情である。
同時代の作(左:千夜一夜1の第949夜)と並べて見た。ほぼ同様の作であるが、左は小寸のためか鬢に耳が無く、鼻は猫鼻。上瞼がなだらかな曲線で優しい表情になっている。こうして並べてみると、母と子、または姉と妹のようにも見える。古い弥治郎こけしの面影をもった2本である。
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