第157夜:33年の弘道
先月の28日、椅子から立ち上がった瞬間、腰に痛みを覚えた。当初は歩くのにも支障があったが、それほど強い痛みではなく数日して歩行は出来るようになった。今でも長いこと座っていると痛みがあるので、軽い腰痛持ちになったしまったようだ。そんな中でもヤフオクを見ていると、弘道のこけしが纏めて5本出ており、胴底の署名からその内の1本が昭和33年作であることが分かった。33年後半から34年前半が弘道こけしのピークであり、中でも33年作は出ることが少ないので、弘道ラブの国恵志堂にしてみれば見過ごすわけには行かず頑張ってしまった。口絵写真は、その弘道こけしの表情である。
ある程度前に作られたこけしは、その表面が白くなっていることがある。これはロウ引きしたロウが固まって白くなったものであり、このロウを剥がせば下から鮮明な色彩が現れることになる。今回の弘道こけしもそのような状態であった。
このような場合、ロウの部分が少ない場合は爪などで剥がしても良いが、かなり多い場合は温めてロウを溶かし布などで拭った方が速く綺麗になる。温めるにはドライヤーが便利である。但し、染料が木地に十分染み込んでいないと、色も溶けて拡散する恐れもあるので、注意が必要である。
こちらが本項のこけし。写真の左が入手時の状態で、右がロウを拭って綺麗になった状態である。かなり綺麗になったことがお分かり頂けると思う。大きさは1尺、昭和33年11月8日作である。弘道の33年、34年作には製作日付が記載されているので便利である。
その33年11月近辺の弘道こけしと並べてみた。右から、33年10月25日、同11月8日(本項のこけし)、34年2月6日である。大きさや胴模様の違いはあるだろうが、左の2本は良く似たこけしであることが分かり製作日が近いような気がする。しかし、製作日付をみると、右2本は2週間ほどの違いであるが、左2本では3か月ほどの違いがある。
この時期の弘道こけしの特徴を文献等で調べてみると、頭部の形態と表情(特に目)に若干違いが見られるようだ。先ず、頭の形は33年作では頭頂部の角と顎のあたりに丸みがあるが、これが次第に角ばってきて、34年になると相当角ばったものになる。これはこの3本を比べてみても、納得できる。次に、目であるが、33年作では左右の目尻がやや下がったおっとりとした表情になっているが、34年になると目尻も水平に近くなって爽やかな表情となってくる。目尻の下がりは太治郎にも見られるが、弘道の師匠である正一のこけしで著しい。33年の弘道こけしの表情には正一の影響が大きかったのが伺われる。
太治郎型に専念した弘道であるが、そのこけし(特に表情)の変化は意外と激しい。国恵志堂も一時期その変遷を追ってみたが、33年~34年のピーク期と42年の復古作以外は魅力がやや乏しくなるようだ。
太治郎型に専念した弘道であるが、そのこけし(特に表情)の変化は意外と激しい。国恵志堂も一時期その変遷を追ってみたが、33年~34年のピーク期と42年の復古作以外は魅力がやや乏しくなるようだ。
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