第162夜:正吾のこけし細工物(2)
さて、正吾さんはいつからこのような細工物を作り始めたのだろうか。正吾さんが修業した「高亀」は厳格な木地屋であり、武蔵や武男の作品を眺めても入れ子のような細工物は見当たらない。もちろん、臼と杵や甕と柄杓、野菜籠のような木地玩具類は「高亀」の製品として作られていた。正吾さんもそのような木地玩具と伝来のこけしを作っていた。同年代の福寿や昭二が新型(創作)こけしに熱中したり、昭和30年代からは古品の復元が盛んになっても、正吾さんはひたすら武蔵の戦後作を引き継いだ作を作り続け、それは昭和42年頃にピークに達する。しかし、その後は第二次こけしブームの中で壁に突き当り、低調な作に陥ってしまう。そこから復活するのは、昭和55年に「備後屋」で開催された「こけし古作と写し展」に出品した武蔵古作の復元作であった。これを契機に正吾さんは武蔵の各種古作に挑戦して目を見張るような作品を再現していった。それが一段落した頃、高橋五郎氏の提唱で開催されたのが「新しい伝統こけし展」である。ここでの新しい試みとして、正吾さんは傘こけしや髷こけし、二側目のこけしに挑戦し、そういった活動の中から細工こけしも生まれていった。今夜は昨夜紹介したペアこけしの内、傘こけしを詳しく紹介しよう。口絵写真は傘こけしの表情である。
こちらが傘こけしである。大きさは1尺5分。平成16年の初挽で大きな傘を被っている。胴は普通のこけしの形態であるが、胸の部分に太い欅の帯を締めている。この帯に象嵌が入っているのは昨夜の髷こけしと同じであるが、円模様が真ん中に小さいものが増えて6個になっている。
帯の上部で胴は2つに分かれ、中にはえじこ(頭はツゲで胴はサルスベリ)とねまりこ(アオハダ)がいずれも胴は木皮付きで入っているほか、1寸7分のこけし4体、それに臼と杵と甕と柄杓も入っている。何とも楽しい細工こけしなのである。 この傘こけしのもう一つの見どころは大きな傘であろう。直径13cm余り、中央に黄色と赤でロクロ模様を描き、その周囲には黄色地をバックに菊模様が華やかに舞っている。何とも華やかな花模様で心が躍るようである。« 第161夜:正吾のこけし細工物(1) | トップページ | 第163夜:友の会2月例会(H29) »
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