第164夜:秋山家の小寸2本
ヤフオクに鳴子の秋山家の小寸こけしが2本出ていた。戦前の秋山慶一郎と耕作と思われるこけしで、いずれも面白い出来だったので入手した。秋山耕作は明治14年の生まれで、忠、慶一郎は弟にあたる。秋山一家は明治31年に鳴子に移り、それから木地業に従事するようになった。耕作のこけしは昭和14年から3年間に妻とらよとの合作で作られたものが知られている。慶一郎はその頃は既に鶴岡に移っていたが、この2本のこけしが一緒に出て来たことから、慶一郎のこけしは鳴子の秋山商店でも売られたのかも知れない。口絵写真は慶一郎こけしの表情である。
こちらがヤフオクに出品された2本である。左が慶一郎で3寸6分、右が耕作で3寸1分。ペアこけしではないが、なかなか様になる2本である。
改めて、慶一郎こけしである。胴下部がかすかに括れているが、鳴子系のたちこの形態ではなく、小寸ながら立派な蔵王系の形態である。首はしっかり回り、保存状態は良く胴の黄色も残っている。赤と緑の交互の重ね菊は、大寸物のようにしっかり描かれたものではなく、緑の方は簡単であっさりしていて葉っぱのようである。頭部は幼子を表した黒頭、への字型の眉毛に眼点の大きな愛らしい瞳、頬には橙色の紅が描かれている。
慶一郎の大寸物と並べてみた。左から6寸2分、4寸5分で昭和16年頃、本品(3寸6分)、4寸(戦後)である。左2本のかっちりとした風格のある戦前作、また右の洗練されてきた戦後作とは雰囲気が異なる。いかにも子供相手の玩具っぽいこけしになっている。心温まる楽しい小品である。
さて、こちらは耕作こけしである。こちらは作り付けである。肩に段は無く、斜めなった肩の部分には赤いロクロ線を2本引いている。首部に刻まれた鉋溝が良いアクセントになっている。耕作の楓模様では、楓の葉芯が下に長く伸びて赤い土玻を貫いている。 頭部の様式は小寸のためか、水引と鬢飾りを×で描いている。右は戦後の慶一郎のこけしであるが、こちらも鬢飾りを×で描いているのが興味深い。« 第163夜:友の会2月例会(H29) | トップページ | 第165夜:落ち穂拾い(佐藤正) »
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