第165夜:落ち穂拾い(佐藤正)
以前、ヤフオクなどでなかなか良い出来なのに全く注目されず、誰にも応札されないで見過ごされてしまうこけしを、失礼ながら「落ち穂拾い」などと呼んで取り上げた。今回もそれに類するこけしの話である。佐藤正のこけしである。渡辺求の優品を入手したことから、その弟子である佐藤正のこけしにも注目していたが、なかなか思いを叶えてくれるものには出会わなかった。そんな折、先日、佐藤正の8寸、6寸の2本組がヤフオクに出品されていた。8寸は三日月目、6寸は十日月目で、特に8寸はその表情に惹かれた。結局、他に誰も応札せず、出品値の600円でゲットできてしまった。今夜はそのこけしを紹介しよう。口絵写真は、その表情である。
佐藤正は昭和4年の生まれ、家が渡辺求の近所だったため昭和32年より求の弟子となり木地修業。同年8月よりこけしを作り始めたというが、国鉄に勤めていたため、本格的に作り出したのは昭和40年代になってからのようだ。当初は求の晩年作の模倣から始めたと思われるが、求は昭和43年12月に亡くなったため、以降は求の各年代のこけしも作っている。
こちらが本項のこけし。大きさは8寸3分。やや角ばった大きめの頭に中央部が微かに膨らんだ太めの胴を付けている。猫鼻で首に襟巻があり、胴上部の菊模様の様式から見ると、昭和30年代の求こけしを模したものと考えることが出来る。
求の秀作(左:第142夜)と並べて見た。いずれも胴中央部に帯を描き、その上下に菊と椿の模様を描く、求が確立した代表的な様式のこけしであるが、正が参考にしたであろう求の時期が違うため、形態にはかなりの違いが見られる。
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佐藤正さんには昭和50年後半に大きな(横13㎝位高さ19㎝位)エジコ2個と尺のこけしを作製してもらったのですがこけしの形態・描彩は独自の物です。
工人にお願いして色々大きなエジコを作製して頂くと置き場所が大変です。
投稿: 雪割草 | 2017年3月 8日 (水) 22時38分
雪割草様
そんな大物を作ってもらいましたか!
工人に特注品を作って貰うのは楽しいものですね!
本当に大物は場所を取るので置き場所には頭を悩ましますね…。
投稿: 国恵 | 2017年3月 9日 (木) 23時59分