第166夜:福寿の鯨目こけし
本ブログ第10夜の中で触れた「福寿の鯨目こけし」が国恵志堂にやってきた。所蔵者のK氏が先日ヤフオクに出品してくれたのをゲットすることが出来たのである。かなり以前に書肆ひやねで見せて貰って以来の再会である。また、1月下旬にやはりヤフオクで入手した滝島茂のこけしは鯨目ではないが、本項のこけしと関連がありそうなので、その辺りも含めて観賞してみたいと思う。口絵写真は福寿鯨目こけしの表情である。
こちらが、本項のこけしの全体像である。大きさは尺1寸5分、勘治型の原寸と同じである。木地形態は勘治型と同じと言って良いだろう。清水寛氏(「こけし全工人の栞」著者)の旧蔵品ということで、胴底には「復元 参考品 非売品」の貼り紙がしてあり、また1980年との書き込みがある。1980年(昭和55年)の5月に福寿さんを訪問した折に、福寿さんから橘勘治の現品を見せて貰った。この時、福寿さんは橘勘治の復元に取り組んでいたのである。従って、本品もその過程で作られたこけしということが出来るだろう。胴模様は橘勘治の模様と同じである。
改めて、頭部の描彩と表情を見てみよう。頭頂部の水引、鬢飾りとも3筆描きである。前髪と紡錘形の後髪との間に元結は描かれていない。橘勘治は3筆の水引の内、真ん中の1本がくねっており、また元結もあるので、橘勘治とはやや異なっている。また、肩の山のロクロ線の様式も普通の勘治型と同じで、橘勘治とは異なる。そして、問題の鯨目である。上瞼は目尻を下げずに水平に伸ばしている。下瞼は目頭と目尻を水平に引き、中央部を上に凹ましている。その上下の瞼の間を黒々とした大きな眼点で埋めている。勘治型の目は潤んだような茫洋とした感じになりがちであるが、このこけしでは鯨目にしたせいか視線の鋭い表情になっている。
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