第170夜:盛の入れ子こけし(戦後)
1本のこけし(親)の中に、子、孫など幾つかのこけしを入れたものを入れ子こけしと言い、国恵志堂の収集アイテムの1つになっている。ところで、その入れ子こけし、よく考えてみると戦前の作はあまり見かけない。遠刈田系では、こけしではないが、達磨や七福神、そして弁慶など入れ子の技術を使った木地玩具は戦前からかなり作られている。一方、胴が太く、入れ子には適した形態の鳴子系では、こけしはもちろん、達磨や七福神も入れ子のものは記憶にない。これは一体、どういうことなのであろうか。そんな戦前の鳴子の木地製品の中で、入れ子が確認できるのは唯一、高橋盛の秋田時代の入れ子こけしである。これについては、千夜一夜(1)の第134夜で紹介した。それは、盛が鳴子を離れて秋田に移り、周囲の影響を受けずに自由に木地製品を作れる環境にあったことが大きいと考えている。ところで、3月の友の会例会に出掛けてみると、入札品に盛の黒いこけしが出ていた。相当保存状態が悪いこけしであったが、その表情から戦後20年代のこけしと思われた。問題は、それが入れ子のこけしであったことである。しかも、親から玄孫まで5本の入れ子であった。今夜は、その入れ子のこけしを紹介しよう。口絵写真は子こけしの表情である。
こちらが、親こけしの全体像である。大きさは1尺。入れ子のためか胴はやや太目。胴中ほどやや上に赤のロクロ線を引き、その部分で胴が2つに分かれるようになっている。胴模様は「高勘」定番の横菊と正面菊の組み合わせ。正面菊の上部横脇に小さな横菊を対で添えている。肩の山は高く、秋田時代の形態を引き継いでいる。面描は上瞼が短く眼点の大きなクリクリ目で、当時の鳴子で流行っていた愛らしい表情である。昭和24,5年頃の作と思われる。
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