第185夜:誓の仲間が増えた
先週末は湯沢から弘前へと久し振りにこけし行脚を満喫した。一面の新緑の息吹の中にやや濃いピンク色の八重桜が名残を惜しんでいた。都会に居るとこけしへの想いにも波があり、本ブログの更新も延び延びになってしまうが、今は想いが強くなっており暫くは頻繁に更新ができそうである。さて、大沼誓のこけしは好きなこけしであり、特に状態が良い戦前作が出るとつい欲しくなってしまう。そこで、最近ヤフオクで入手し、国恵志堂の誓コレクションに仲間入りしたこけしを紹介しよう。口絵写真はその表情である。
こちらがその全体像。大きさは1尺。胴底に「十六.四.二十六 三五ヤ」のラベルが貼ってあり、昭和16年4月26日に「三五屋」で入手したものであろうか。このこけしの大きな特徴は、肩の山と胴下部に施されたウテラ挽きであろう。この時期の誓こけしは自挽きであり、肩の山には3本の赤いロクロ線を入れたものが多い(第141夜参照)ので珍しい。このように変わった様式のこけしを作れたのは、誓が「高勘」や「高亀」、大沼岩太郎・岩蔵系列などの老舗に属しておらず、そういう制約に縛られなかったからであろう。なお、胴には黄色を塗り、その上に菊花を3輪咲かせている。
第141夜で紹介した2本と並べてみた。右端は昭和15年、中央と左は16年作である。面描など殆ど変わらないが、胴の形態は裾広がりで反りの大きな右端と比べて、本項のこけしは直胴で反りも少ない。
頭頂部の様式も比べてみよう。右2本に比べると前髪が小さくなり水引が華やかになっている。復活から時が経つにつれて、ウテラ挽きや華麗な描彩など技巧的になっている傾向が見られるが、その分、木地形態や頭部の描彩、肩の山の太いロクロなどの豪快さが薄れてしまったのは惜しまれる。
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