第204夜:前髪の無い正一こけし
23日、友の会の7月例会で入札品のコーナーに目をやると、小さいながら紫の波型ロクロ線が特徴的なあのこけしが立っていた。太治郎が出るとは思えず、正一か弘道かと思いながら近づいた。太治郎型であれば通常頭は縦長であるが、この小こけしの頭はむしろ横広気味で、頭と胴は作り付け。小さいこともあって、円らな瞳が何とも愛らしい。胴底には昭和24年6月、46才と佐藤正一の署名がある。そして一番の注目は、前髪が無く、その部分には弥治郎こけしを思わせる赤い半円の飾りが3つ描かれていることである。「これは欲しい!」と出品価格から入札額を決めたが、一抹の不安が残る。これまで落札し損なった事が何回もあるからだ。もう一度考えて、ワンランク上の価格にして入札した。結果は運よく落札。しかし、次点の金額を聞くと最初に考えた入札額より100円上であり、そのまま入れていたら悔しさの極致を味わうところであった・・・。口絵写真はその正一こけしの表情である。
こちらが全体像である。大きさは4寸5分。頭と胴は作り付けで、首の部分は段を付けている。小寸ながら胴のロクロ線模様は大寸物と全く同じで手抜きは無い。バランス的には頭がやや小さいような気もするが…。しかし、このこけしの最大の特徴は、前髪の部分の描彩様式だろう。
やや上方から頭の部分を見てみた。正一のこけしにこのような描彩があることは知っていた。「木の花(第参拾号)」の16-17頁に矢田正生氏がそのことを記し、17年作の正一こけし(3寸)の写真を掲載しているからである。それによると、太治郎の最晩年作の小寸(2寸5分、箕輪氏蔵)では前髪がなく髪飾りが赤で描かれるが凹凸なく三つ山にはなっていないが、17年作の3寸正一こけしは、この太治郎こけしの継承であると・・・。
17年は正一が太治郎こけしを継承して間もない頃であり、しかも3寸という小寸。しかし今回の正一こけしはやや大きい4寸5分で昭和24年の作。この間の正一こけしは実物はおろか文献でも殆ど目にしないため、どのようなものが作られていたか定かではないが、今回のこけしの出現により、かなりの長期に渡って、この三つ山こけしが作られていたことが推測される。
17年は正一が太治郎こけしを継承して間もない頃であり、しかも3寸という小寸。しかし今回の正一こけしはやや大きい4寸5分で昭和24年の作。この間の正一こけしは実物はおろか文献でも殆ど目にしないため、どのようなものが作られていたか定かではないが、今回のこけしの出現により、かなりの長期に渡って、この三つ山こけしが作られていたことが推測される。
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