第207夜:高岡幸三郎のこけし
仙台地区には戦前から色々な系統の工人が出入りしていたために、その影響を受けて系統がはっきりしないこけしが散見される。高岡幸三郎のこけしもそういった範疇に入るこけしの一つであろう。それを物語るように、幸三郎のこけしは「こけし 美と系譜」では作並系に、「東北のこけし」では山形系(仙台亜系)に、そして「こけし辞典」では弥治郎系の変型に分類されている。今夜は、その幸三郎のこけしを見ていこう。口絵写真は、幸三郎こけしの表情である。
高岡幸三郎は明治12年、仙台の生まれ。当初、佐藤材木店で木地挽きに従事したが、大正7年頃に福々商会を受け継いで木地を挽いた。この福々商会には鳴子や遠刈田より多くの工人が職人として交代で勤めた。佐藤巳之助も昭和5年から8年まで職人をした。昭和10年から2年間、猪狩庄平(佐藤誠の弟子)が来てこけしを作り、幸三郎の5男鉄寿はそれを参考にしてこけしを作った。しかし、鉄寿は昭和12年に早逝したため、それ以降は幸三郎が鉄寿に替わってこけしを作った。庄平のこけしは誠のこけしを引き継いだ弥治郎系のこけしと思われるので、鉄寿のこけしも弥治郎風のこけしがベースであったと思われるが、福々商会に来ていた巳之助の影響も大きいと思われる。
さて、こちらが幸三郎のこけしである。大きさは9寸8分。「14.5.27」の書き込みがある。鉄寿のこけしをそのまま引き継いだものであるが、庄平からの弥治郎の影響は一側目と撥鼻、胴の旭菊くらいで頭の描彩などは巳之助の影響が見受けられる。切れ長の一側目は気品があり完成度の高いこけしとなっている。なお、幸三郎の特長の1つは染料に泥絵の具を使っていることであり、ピンクっぽい赤、明るい緑に黄色も多く使われ、パステル調のポップなこけしとなっている。
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