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第216夜:菱菊模様の慶一郎

Keichiro_s13_kao2

戦前の秋山慶一郎のこけしは国恵志堂が好きなこけしの1つである。慶一郎のこけしは大正期のものが1本だけ知られている他は、昭和11年に石井眞之助氏によって紹介されたものが復活初作と言われている。12年作は知られておらず、13年から少しずつ作り始め、14年からは本格的に作ったようだ。慶一郎のこけしは鳴子系と蔵王系をミックスしたもので、木地形態、胴模様、頭部の描彩(オカッパ、手絡)の組み合わせで幾つかのタイプに分類される。中でも菱菊を胴に描いたタイプは初期のものだけで少ないという。そんな菱菊模様の慶一郎が先日ヤフオクに出たので紹介しよう。口絵写真はその表情である。

慶一郎の菱菊模様としては、昭和11年の尺5寸が大名物として知られている。大きな頭に太い胴のボリューム感に溢れた木地形態と胴全面に描かれた大きな菱菊は圧倒的な迫力を持って迫ってくる。石井氏より流れたと思われる深澤コレクションの尺も同手のものである。いずれも肩の山には波線が入り阿部常吉のこけしと相通じるものがある。
久松コレクションの尺も菱菊模様であるが、頭の大きさは小さくなり、その分胴が長くなってすっきりした形態になっている。胴下部に鉋溝が1本入り、肩の山の波線は普通のロクロ線に変っている。菱菊は小さくなり上部の横菊が3輪に増えている。眉目の描線は滑らかでおとなしい。頭のリボンは赤と黄で塗られている。胴下部の土玻は横一本のように見える。製作年代は「こけしの世界」では14年、「木の花(第参拾弐号)」では13年頃となっている。

Keichiro_s13_2men

さて、こちらが本項の慶一郎こけしである。大きさは9寸5分。胴下部には大きな水濡れの跡があり、太い赤ロクロ線の迫力を損ねているのが惜しい。緑もしっかり残っており、全体的な保存状態はまずまずであろう。胴上部の横菊は小さく、その両脇の横菊は更に小さく描かれている。頭が小さめですらりとした形態は久松蔵品と同様であるが、頭の横広感はそれほどでもない。頭のリボンは赤と緑であり、頭頂部の中剃りは赤である。

Keichiro_s13_atama

久松蔵品との一番の違いは眉・目の描き方であろう。本品では、眉目も描線が滑らかではなく、山形に尖っておりアクセントも付いている。この眉目の描法は11年の尺5寸に近い。また、土玻も本品では三筆で重ねて描いている。このような点から考えると、久松蔵品よりはやや古く、13年の作と思われる。

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やや後の小寸(右、14,5年か)と並べてみた。実にしっくりする組み合わせである。

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コメント

以前ここで紹介された、大沼誓古作と通じるものがありますね♪

しょ〜じ様
なるほど…。
蔵王系の様式になっても、もともと鳴子系ですからねぇ…。

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